2016年には、国連の女子差別撤廃委員会が女性への差別だとして皇室典範の改正を求める勧告案をまとめようとしたことがあった。この時は日本側の強い抗議で最終的には削除されたが、「男系男子のみ継承する」という日本固有の伝統が、世界的には奇異な目で見られている。
ところが、肝心の安倍晋三首相はというと、女性・女系天皇の容認には消極的らしい。官邸関係者が明かす。
「女性・女系天皇を認めれば、愛子さまか悠仁さまかと国論を二分するような際どい議論になるので、総理としては“また数十年後に話し合えばいい”と先送りのスタンスのようです」
確かに、現行のルールでは仕方がないことかもしれない。しかし、日本の一般的な家督相続との親和性や、愛子さまのお姿を温かく見守ってきた国民感情からすれば、「なぜ天皇陛下の第1子である愛子さまが天皇になれないのか」という疑問は尽きない。まして、将来的に皇室の存続も危ぶまれる事態では、もっと議論を尽くすべきではないだろうか。
一連の即位に関する行事を終え、「令和」が本格的にスタートする2020年は、間違いなく「皇室改革元年」になるはずだ。新たな時代にふさわしい、新しい皇室のあり方について、さまざまな専門家の見方を聞いた。
◆海外王室の多くが女系女王容認 王朝名も変わるイギリス
そもそも「女性天皇」「女系天皇」「女性宮家」とは何か。NHK放送文化研究所が2019年9月に実施した調査によると、「女系」天皇の賛否を聞いた質問では「賛成」が71%だった。ただし、「女系」天皇の意味を知っているかという質問には、「知らない」が52%と過半数を占めた。動物行動学研究家でエッセイストの竹内久美子さんが説明する。
「たとえば、天皇陛下の実子である愛子さまが天皇になられたら、男性皇族の血を引いているので『男系』の『女性天皇』となります。一方、愛子さまが民間人とご結婚されて生まれたお子さんが天皇になられると、女性皇族の血を引いているので、男女問わず『女系天皇』となります。『男系』の女性天皇は歴史上8方10代いましたが、女系天皇は過去に1人も存在しません」
秋篠宮さまが1965年に生まれてから、2006年に悠仁さまが誕生されるまで、実に41年間も男系男子が生まれなかった。そのため、悠仁さまが生まれる前までは、安定的な皇位継承のため、女性・女系天皇を容認する機運が何度か高まったこともある。
たとえば、2005年の小泉政権時には「皇室典範に関する有識者会議」が設置され、「今後における皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大することが適当である」という報告書がまとめられた。
しかし、報告書が出た後に紀子さまが悠仁さまを懐妊されたことで、有識者会議の提案を受けた法案の提出は見送られた。