また2011年には、民主党の野田政権下で「女性宮家」の創設も検討された。これは女性皇族が結婚後も皇籍を離れず、当主となって作る宮家のことだ。現行の皇室典範により、それまで存在したことはなかったが、皇族減少の対策として創設が打ち出された。だが、これも議論が難航し、法案にはまとまらなかった。
すでに説明したように、その後を受け継いだ安倍政権では、「女性天皇」「女系天皇」「女性宮家」のいずれも本格的な議論には至っておらず、将来に向けた課題は先送りされたままだ。
一方、世界の王室では、男系男子の方が少数派のようだ。日本に関する数多くの著書がある弁護士のケント・ギルバートさんが話す。
「ヨーロッパの王室、特にイギリスでは、女王が認められているだけでなく、男系継承者が断絶した時に女系継承が認められています。そのため血縁は続いても、王室の家名が変わる、つまり、王朝名が変わることが繰り返されてきました」
ヨーロッパの王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんも指摘する。
「ヨーロッパ各国の王室では『女王の時代』が花咲こうとしています。スウェーデンではヴィクトリア王太子が初の女王になる予定で、オランダも長女のアマリア王女が王位継承者と決まっています。ベルギーも、エリザベート王女が次期女王となり、イギリスも2013年に王位継承順位を男子優先から長子優先に法律を変えました。
今や、男女を問わず第1子を優先する『長子優先』は国が男女平等であるメッセージ。各国の国民も歓迎しています。“愛子さまが天皇になれないのは男尊女卑の国だから”と言われても、反論は難しいでしょう」
126代、約2700年とされる日本の皇室の歴史に胸を張ろうとも、現実には皇位継承者の減少という課題がのしかかっている。麗澤大学経済学部教授の八木秀次さんが話す。
「過去の歴史においても、皇位継承の課題はありました。33代推古天皇や41代持統天皇など、権力争いが激しい飛鳥~奈良時代に女性天皇が集中しています。
当時は、男性皇族が多く、時に権力争いもありました。誰が天皇になっても争いが生じかねない時に、中立的な立場の女性が中継ぎ役として天皇になるという背景があったようです。ただ、女系の血が生まれないよう、歴代の女性天皇は天皇即位後子供を産まず、全員未亡人か生涯独身でした」
一方、高森さんは別の見方をする。