「どーんと落ちた」と語るスリムクラブの2人
スリムクラブの漫才はM-1に一大革命をもたらした。それまで、M-1必勝法は制限時間の4分間にいかに多くのボケを詰め込むかだと考えられていた。そのためアップテンポな漫才の方が有利とされていた。ところが、スリムクラブはその逆を行った。テンポを極端に緩め、ボケ数を最小限にし、しかし「間」で笑わせたのだ。つまり、喋らずに爆笑をさらったわけだ。
M-1準優勝を境に景色が一変した。真栄田は、人気も、知名度も、収入も、「垂直に上がった」と振り返る。
「やばいですよ、M-1の影響力は。打ち上げを終えて帰るとき、(深夜)12時ぐらいかな、道行く人に指差され、電車に乗ったら、もう、ざわついてるんですよ。『M-1の人じゃない?』って。最初の3年ぐらいは仕事量も異常でしたから」
だが、もちろん、いつまでも垂直に上昇し続けるわけではない。真栄田が成長曲線の続きを話す。
「2013年くらいから落ち着きはじめて、横ばいになって。で、こないだでどーんと落ちた」
2019年夏、お笑い界は、大スキャンダルに揺れた。吉本興業所属の宮迫博之や田村亮ら芸人が反社会勢力の集まりに参加し、連日、ワイドショー等を賑わした一連の闇営業問題である。
その渦中の6月28日、そこから飛び火するかのように一枚の写真が写真週刊誌に掲載された。夜の飲食店らしきところでスリムクラブと数人の男が一緒に写っている写真だった。この写真は遡ること3年、2016年夏に撮られたものだった。
スリムクラブは他事務所の芸人仲間から「ギャラ10万で飲食店経営者の誕生日会に来て欲しい」と声をかけられ、軽い気持ちで応じた。ところが、そこに座っていたうちの1人が指定暴力団の幹部だったことがのちにわかったのだ。