真栄田は松村にも無心を申し出たが「僕は金の貸し借りはしてないんだ。ごめんね」と断られる。すると、後日、一冊の本が送られてきたという。
「相田みつをの本でした。彼、優しいんですよ。そのあとも、酒でも飲んでくれって、獺祭を送ってきてくれましたね」
謹慎中は老人ホームでボランティアをしながら、時間さえあれば、災いを招いてしまった自分たちと真正面から向き合った。内間は自分の卑しさを恥じた。
「あのときは、せこい考えがあった。生活費を稼ぐためというより、僕は単なる遊ぶお金が欲しかったんです。もらえるもんはもらっておこうみたいな考え方です」
真栄田は『探偵!ナイトスクープ』の2代目局長だった俳優・西田敏行からの電話で目が覚めたという。
「自分の中にあった恐怖心について考えてるとき、西田さんから電話があって『真栄田君、自分が何でお笑いを選んだのか、何で舞台に立っているのか、もう一度、よく考えてみなさい』って言われて。そうだって思った。やっぱり、人を笑わせるのが好きだったんですよ。なのに、いつの間にか地位とか金を追いかけてた。そんなんじゃ楽しくできねえよなと」
●なかむら・けい/1973年千葉県生まれ。同志社大学法学部卒。著書に『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』など。ナイツ・塙宣之の著書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』の取材・執筆を担当。近著に『金足農業、燃ゆ』。
※週刊ポスト2020年3月13日号