ただ、苦しかったときだけに、人の優しさが身にしみた。
真栄田の窮状を知り、真っ先に手を差し伸べてくれたのは吉本興業の先輩でもあるダウンタウンの松本人志だった。真栄田が振り返る。
「食事に呼んでもらって、まず最初に『お前、嘘はついてないよな。ほんまに知らんで行ったんよな』と。なので、はい、と答えました。そうしたら、経済的なことでもなんでも助けてやるって言ってくれたので、お願いしますって即答したら、横にいた(先輩芸人の)たむらけんじさんに『早い! 早い! 一回は断るもんや』ってたしなめられました。
でも、しばらくして、放送作家の方がうちにお金を届けてくれたんです。誰からですかって聞いたら、『本人はタイガーマスクと名乗ってます』って。あ、松本さんや、ありがとうございます、って」
また、事件後に降板したバラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』で一緒だった松村邦洋は毎晩のように真栄田に電話をかけてきてくれた。あるときは漫談を30分も聞かせてくれた。
情報番組『スッキリ』でMCを務める加藤浩次が吉本興業に対し「経営陣が変わらないなら僕は会社を辞める!」とかみついたときは、加藤の身を案じつつ、こんな持論をぶつけてきた。
「真栄田君、大塩平八郎の乱も、島原の乱も、乱と呼ばれたものは全部、鎮圧されてきた。加藤君も、加藤の乱って言われてるじゃないですか。彼は、ちょっと早まったんじゃないかな」