首相補佐官、和泉洋人氏(時事通信フォト)
当然ながらウイルス対策は厚労省が担った。だが、その中心となった人物がまずかった。
官邸官僚の一人である首相補佐官、和泉洋人の寵愛を受けてきた厚労省の大坪寛子・大臣官房審議官だ。国立感染症研究所出身の彼女は、安倍政権の発足に伴って発足した「健康・医療戦略室」の参事官(課長級)に起用され、やがて事務方ナンバー2の次長に抜擢。と同時に厚労省の審議官に出世する。
もとはといえば健康・医療戦略室は、アベノミクスの成長戦略である先端医療分野の司令塔と位置付けられ、2013年に内閣官房に置かれた。医療行政を担う厚労、大学の医学・薬学・獣医学部を所管する文科、病院や医薬品の輸出を進める経産の3省が集まり構成されている。官邸主導で縦割り行政を排除すると気勢を上げ、鳴り物入りでスタートした。
その初代担当大臣になったのが、菅官房長官である。
「菅さんは懐刀の和泉補佐官を室長に任命し、さらに和泉さんが大坪さんを次長に引きあげて仕切らせた。菅―和泉―大坪ラインで年間1300億円を超える莫大な予算を差配し、我が物顔で振る舞ってきたわけです」
大坪といえば、和泉との上司部下を超えた京都や海外出張と、その男女関係が明るみに出たのは周知の通りだ。
この健康・医療戦略室は、ライフサイエンスや感染症研究を担っている。和泉が、感染症研究を標榜する加計学園の獣医学部新設に口出ししたのも、健康・医療戦略室長だからだ。
一方、医官の大坪は和泉の“主治医”として重要政策に首を突っこむ。実は官房副長官の杉田和博の脈まで取っているという。