「もともと、米倉さんは『シカゴ』の大ファン。世界各国で上演される舞台を見に行ったり、サントラを擦り切れるまで聴いていた。2008年、2010年と『日本版シカゴ』で主人公のロキシー・ハートを務めたときには“本場ブロードウェイへの挑戦”が次の目標になっていました。
2011年、渡米して語学やダンスなどのレッスンを受け、2012年に念願かなってブロードウェイで初舞台を踏む。しかもいきなり、『シカゴ』の主演に抜擢です。この頃は次々に目標を定め、こういうチャレンジができるのも“いまの事務所だから”と、前向きでした」(舞台関係者)
1度目の挑戦では語学面だけでなく、ブロードウェイ流のハードな稽古の前に打ちのめされ、フィジカルの力不足を痛感。人種差別を感じ、精神的に追い込まれたこともあった。2度目を経て、女優生活20周年となった昨年、3度目のロキシー・ハートを演じて、ようやく“自信を持ってやれるようになった”という。この経験から、“もっと海外でやりたい”という夢が膨らんだ。
「しかし、事務所の考えは違います。米倉さんの海外挑戦を邪魔はしないものの、活動のメインは国内。海外進出には消極的で“たまに米倉のガス抜きでやれたらいいのでは”というスタンス。実際、渡航費や滞在費は米倉さんの自腹だと聞いています。米倉さんは、事務所とのビジョンの違いにジレンマを感じていたように見えました」(前出・舞台関係者)
『シカゴ』を終えた直後の昨年の9月、『ドクターX』の第6シリーズがクランクイン。今作でも全話の平均視聴率は18.48%を記録し、2019年の民放連ドラの平均視聴率トップの座を獲得した。だが、彼女はそれに満足せず、むしろ危機感さえ覚えていた。
「米倉さんはシリーズが進むにつれ、大門未知子役のイメージがつきすぎることに難色を示していました。あれだけ癖の強い役をずっと演じていたら、ほかの役ができなくなる。しかし、テレビ局サイドも事務所としても確実に数字が取れる彼女のドラマシリーズを手放したくない。一度は米倉さんの言い分を聞こうと『ドクターX』ではなく、弁護士役の『リーガルV』を立ち上げましたが、同じ局ということやスタッフがかぶった部分もあり、役の雰囲気は『ドクターX』とむしろ一緒。米倉さんの思いとはかけ離れていった。
米倉さんは座長という責任から周囲の期待に必死に応えていましたが、複雑な思いを抱えていたことが見て取れました」(テレビ局関係者)
2013年10月以降、米倉はテレビ朝日以外で連ドラに主演していない。選ばれ続けることは名誉なことでもあるが、それは彼女が望んだことではなかった。