主計局畑を出世の本流とする財務省では、事務次官の福田がセクハラ問題で去り、官房長から主計局長に昇進していた岡本が後釜に座った。岡本の次官就任は役所の建て直しを担う省内の待望論があった。が、同じ主計畑の太田については、省内の評判がすこぶる悪い。それは、無茶な政策を黙ってやり過ごし、官邸にすり寄る姿が目にあまるからだという。
◆守り神を検事総長に
なぜそうなってしまうのか。理由は、官邸に幹部人事を握られてしまっているからにほかならない。古くは、総務省の事務次官候補と呼ばれた平嶋彰英が菅の肝煎りのふるさと納税に異議を呈し、2015年7月、自治税務局長から自治大学校長に左遷されてしまったケースもある。霞が関では今もそれが語り継がれている。
そして官邸による官僚支配は、一般公務員だけにとどまらない。1月31日、唐突に閣議決定された東京高検検事長の定年延長問題は、司法の独立という国の根幹を揺るがせている。
準司法官と位置付けられる検察官の定年は、検察庁法により、職務と責任の特殊性に基づき、一般の国家公務員の特例と定められてきた。刑事司法の公平性から、検事は誰もが63歳で任を解かれ、検察トップの検事総長だけが65歳まで務める。
東京高検検事長の黒川弘務もまた、今年2月8日の誕生日をもって63歳となり、定年退官するはずだった。が、安倍政権では閣議で8月7日まで定年を半年間延長するという禁じ手を使った。おかげで黒川が検事総長に就任できる──。首相官邸がそんなシナリオを描いたとされる。