とはいえ、テレビとは比べ物にならないほど、のんびりしているようにも見えるのも事実。いや、事態を把握していないわけではもちろんないし、もともと、ラジオはリスナーの方の生活現状や御意見などは、テレビの生ワイドなどよりも数多く入ってくるメディア。安倍首相の緊急事態宣言を受けて、何がどう日々の生活に関わってくるのかという現実や御意見は、こちらが取材しなくても、リスナーの方々から続々届く。
理由は番組パーソナリティとリスナーの関係性がテレビのそれよりも濃厚だし密接だからだ。近年は番組名にハッシュタグをつけてTwitterで…と募り方もしているけれど、今もファクスが多数届くし、もちろん、メールも続々届く。
◆震災でも注目、ラジオならではの強み
それらを精査するのはディレクターや放送作家だが、一人か二人居れば十分で、スタッフはリスナーを「ご新規さん」「常連さん」に即座に見分けることができるし、ラジオネームや居住地、家族構成などまで頭に入っているほど、現場はアットホームなのである。
実はつい先日、驚くことがあった。私は毎週月曜日、文化放送の報道部が制作する『斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI』のワンコーナーに出演しているのだが、テレビのレギュラー出演がなくなったり、リモート出演に切り替わったりしていることから、自ら「電話出演」を選んだのだ。
が、スタッフから「来週はどうなさいますか?」と聞かれたからだ。緊急事態宣言が出る前のことではあったが、まだラジオ局では、どういうカタチであれ、スタジオに集っても大丈夫…という判断だったのだろう。
繰り返しになるが、理由は、番組作りに携わるスタッフ数の桁違いな少なさだ。
私はもともとAMラジオのレポーターだったのでよく理解できる。取材はテープレコーダー片手に一人で現場に行けるし、専用の機材を積んだラジオカーを利用すれば、生中継だって二人ぐらいでできるのがラジオ。
さらに、ラジオ番組では、「曲をかけてつないでいく」という方法があるので、ディレクターとミキサー二人で番組を作ることもできるのだ。その昔の深夜放送は、まさにそういうスタイルがとられていたし、後にニッポン放送の社長になった亀淵昭信氏をはじめ、ディレクターなのに人気DJでもあった人がラジオ局には本当に大勢いたものである。
以前仕事で御世話になったラジオNIKKEI(旧・ラジオたんぱ)のディレクター、薬師神亮氏がFacebookに次のように綴っていた。「人と会って話をすることを自粛している人たちに向かって、ラジオは何が出来るだろうか? 電話を使ってリスナーと話すコーナーは当たり前にあった。(中略)ラジオで電話を使ってできることはいくらでもある。電リク(電話リクエスト)、子ども相談室、いや単に「何してるの? 元気?」と直接電話して話すだけでもいいんじゃないか(後略)」