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『M』の魔力 僕らはなぜアユとマサから目が離せないのか

「M」は伝説のドラマとなるか(イラスト/ヨシムラヒロム)

「M」は伝説のドラマとなるか(イラスト/ヨシムラヒロム)

 放送のたびに各所で話題になるドラマ『M~愛すべき人がいて~』(テレビ朝日、AbemaTV)は、ヒロインのモデルである浜崎あゆみファン以外も虜にしている。眼帯をつけたライバル役の田中みな実や、ハイテンションなボイストレーナーとしてゲスト出演した水野美紀らが話題だが、やはりヒロインとその相手役の関係が気になるというのは、イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏。大映ドラマ視聴体験を通過していない世代でもあるヨシムラ氏が、アユとマサからなぜ目が離せなくなるのか、そしてドラマ『M』が持つ魔力について考えた。

 * * *
“浜崎あゆみ”を見ると、中3の冬を思い出す。当時、浜崎あゆみは社会現象となっていて、女子生徒の多くが何かしらのグッズを持っていた。身に付けるだけでは満足できなかったのだろう、クラスのマドンナ的存在の金井さんの机には白い修正液で特徴的な”A”のロゴまでもがレタリングされていた。僕にとって”アユ”とは、金井さんの机に刻まれた”A”を指す。

 あれから20年の月日が経ったが、まさかここにきて”浜崎あゆみ”のイメージが更新されるとは思ってもみなかった。今現在の僕にとって”アユ”とはテレビ朝日とAbemaTVが共同制作しているドラマ『M~愛すべき人がいて~』である。現在、第3話までが公開されているのだが、もう浜崎あゆみとそのプロデューサー・松浦勝人のドラマに夢中、夢中。33歳となった今、人生で最も浜崎あゆみの曲に親しんでいる。なんたって、ドラマで盛りあがる場面になると必ず浜崎あゆみのヒット曲が流れるのだ。最高の状態で曲を聴くわけだから、グッとくるに決まっている。このドラマを観るようになって、一生でいちばん、彼女の曲に耳を傾けている。

 様々な角度から検証されている話題作だが、個人的に注視してしまったのがアユ(浜崎あゆみがモデル)とマサ(松浦勝人がモデル)のディープな関係性。劇中、アユとマサは”浜崎あゆみ”というスターを生むための共同作業を行う。2人は強い繋がりと理想をエネルギーに換えて、新世界を築き上げていく。

 ドラマの世界観は現実ではなく、基本的な設定から創作だろう……、と疑いたくなるほどクセが強い。しかし、アユとマサのモデルである浜崎あゆみと松浦勝人が実際に周囲に及ぼした影響をかなり忠実に再現している、と聞いた。確かに松浦勝人のInstagramを見ると、マサのような熱い男である。ドラマで非現実的に感じる2人の世界がリアルだったのか、と思えてくる記述がそこかしこにある。

 例えば、4月18日に投稿された写真では松浦自身と浜崎あゆみがハグをしている。下記は投稿に添えられた文章である。

「いつもどんな時も何があっても どんなことがあっても 俺たちは負けなかったよな。 多分それはこれからも続くのさ。 永遠にね。 誰に邪魔されても ぜってえ負けねぇ!」

「ぜってえ負けねぇ!」という根性論の匂いが強い言葉は、オシャレ空間であるインスタに似合わないはず。しかし、浜崎、松浦ペアにとってはこれこそインスタ映え! そして、2人の精神性を完璧に再現しているのがドラマ『M~愛すべき人がいて~』である。

 ドラマで多く描写されているのは、今のところ2人の下積み時代である。タレントとして仕事はあるけれど自分はくすぶっていると悩むアユを、すでにスタープロデューサーだったマサが見出し、「ぜってえ負けねぇ!」2人が「今までにいないカッコいいアーティスト像」を築き上げる過程を描く。毎回、アユには理不尽にも見える試練が与えられるが、くじけそうになっても、マサから叱咤激励されて必ず乗り越える。

 たとえば、あるときはアユの練習シューズに画鋲が入れられている。別のときには、デビューする歌手を選ぶためアユとそのライバルは山岳レースをさせられる。他にも嫌がらせを含めたアユを邪魔する様々な出来事が襲いかかるが、毎回、最後にアユとマサは試練をクリアし抱きしめ合う。だから各話の最後には、困難を乗り越えた安心感が漂い、勧善懲悪のヒーロードラマのようにすべてが解決したような気持ちで見終わることが出来る。『M~愛すべき人がいて~』は構図が明確で、物語の展開はとことんわかりやすくスカッとしている。そして、「浜崎あゆみはのちにスターになる」と知っている我々は、アユとマサが「ぜってえ負けねぇ!」カタチでドラマが終わることもあらかじめ分かっている。安心して観ていられるドラマでもある。

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