金曜の『報道ステーション』終わりという時間、主婦が一人で見る『不機嫌な果実』。この先、どんな展開になるのか、どう数字が伸びていくのか、愉しみでならない。
『不機嫌な果実』は、いわゆる“夜メロ”のジャンルだが、その元祖といえば、NHKの「ドラマ10」だろう。鈴木京香と長谷川博己がドラマでだけでなくプライベートでも結ばれるきっかけとなった『セカンドバージン』や、木村佳乃主演の『はつ恋』、井川遥主演の『ガラスの家』などが代表作だが、その「ドラマ10」がこの4月、火曜午後10時から金曜午後10時に移設されたのだ。つまり、『不機嫌な果実』と同じ曜日の1時間15分前開始。
移設後第1作目は、奇しくも、かつて『不機嫌な果実』でヒロインを演じた石田ゆり子主演の『コントレール〜罪と恋〜』だ。脚本は、件の『セカンドバージン』『ガラスの家』を手がけた大石静氏。
無差別殺人で夫を失ったヒロイン=石田と、犯人を取り押さえる際、その夫を死なせてしまった男性=井浦新との許されざる恋を描いている。
女優に年齢はないというが、石田はアラフィフだ。が、『不機嫌な果実』の頃と変わらぬ美貌と若々しさを保ち、現役感たっぷり。井浦新は、有能な弁護士だったが例の事故のせいで失語症となり、現在はトラック運転手という絶妙な設定だ。
大石氏がFacebookで情報解禁前から小出しに宣伝していたのだが、まだブームとは言い難い視聴率だ。
NHKも大石氏も「こんなハズではない」と思ったのだろう。ゴールデンウィーク中の昼下がり、3日連続で1話〜3話の再放送を行い、6日の4話に視聴者を誘っていた。
いまはなき“昼ドラ”枠に近い時間帯に3日連続で再放送する作戦は私は成功だったと思う。なぜなら私の周りでは「初めて見た」「いきなりハマった」というアラフィフ女性がかなりの数いたからである。
当然のことながら、昼メロとしても『コントレール〜』は出来すぎていて、なんともいえぬ後ろめたさと妖しさが段積みされている。大石氏とNHKが自信をもって移設第1作にしただけのことはあり、今後、『不機嫌な果実』と共に、夜メロブームが再びやってくることは間違いないだろう。
テレビ番組はどのジャンルでもそうなのだが、ドラマが置かれている状況はもっとも悪くなっているように見える。毎週、同時刻にテレビの前に座ってくれる“お客”はどんどん少なくなり、かなり年配の視聴者でも録画で見たり、各局が力を入れているネット上の配信によって視聴されたりしている。
どういう見られ方だったとしても見てもらったほうがいいし、特に“夜メロ”は、女性たちにとって「一人でこっそり見たい」ジャンル。
1〜2作を除いて視聴率が極端に低迷している4月期の連続ドラマだが、もともとドラマが大好きなF2後半からF3にとって、『不機嫌な果実』と『コントレール』は、再びドラマをじっくり見る大きなきっかけになるハズ。両作品の5月、6月が色々な意味で楽しみでならない。
撮影■浅野剛 メイク■HIROTAKA(LYDIA PRO) スタイリスト■ume