では田中はどうか。近著に『無敗の男―田中将大』(大和書房刊)があるスポーツジャーナリスト・古内義明氏はこう話す。
「田中は1年目ということもあり、まずは捕手のサインを信じて投げるというスタンスです。投げたい球種についてはベンチで通訳を交えて捕手とよく会話して、アピールしている。組織の中に溶け込んでこそ、自分の要求も伝わりやすいと捉えているのです」
また、古内氏によれば、田中とダルビッシュにはもう一つ大きな違いがあるという。“処世術”だ。
「田中は小学生時代には坂本勇人(現・巨人)、楽天では岩隈久志、WBC日本代表には松坂大輔やダルビッシュ、そして今は同僚に黒田博樹がいるなど、常にその側には目標となる人物がいました。それを乗り越えてNo.1になっていくのが、田中の処世術だったのです。
一方、所属するチームでは常に唯一無二の存在感を求められ、我が道をゆくのがダルビッシュのこれまででした。いわば天才肌の宿命ともいえます」
※週刊ポスト2014年5月30日号