芸能

小栗演じる信長とクドカン新作は「運動神経」で楽しむドラマ

 ドラマウォッチャーにとっては忙しくも胸高なる季節。今期の注目作の出来栄えはどうか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 秋ドラマの話題作がスタートしました。久々の月9での小栗旬主演、しかもこの枠で初の時代劇と注目される「信長協奏曲」(フジテレビ系午後9時)、初回視聴率は15.8%。一方、宮藤官九郎脚本・錦戸亮主演の「ごめんね青春!」(TBS系日曜午後9時)は10.1%。録画視聴も当たり前の今、もはや視聴率という数字の意味はよくわかりませんが、ドラマ内容を見る限り、どちらも実にいい感じで走り出しました。

「信長協奏曲」は、勉強嫌いで歴史に全く興味がない高校生(小栗旬)が、戦国時代にタイムスリップ。いきなり織田信長として生きていく、という破天荒な設定。「典型的な現代の若者」が「武士」になるという超飛躍。それを、実に楽しげに躍動感たっぷりに、イキイキと演じる小栗旬の姿がいい。軽やかな身体は、まるで子犬のように跳ね回っている。脇の役者陣--柴咲コウ、向井理、柳楽優弥……それぞれの個性もよく際立っています。

 一方、「ごめんね青春!」は静岡県三島市の男子・女子高校を舞台にした学園コメディ。脚本担当クドカンは、学園ものにありがちな「いじめ、学級崩壊、妊娠は、一切やらない」と封印したとか。えらい。男子校と女子校を舞台にした青春ドラマ、つまり「凡庸さ」を土俵にするという宣言です。

 平凡な日常の中でどこまでぶっ飛べるか。突き抜けるか。転がるか。ふざけた台詞の応酬、その合間にふと滲み出す、ほろ苦い青春の風景。そのリアリティが視聴者の胸にぐっと響く。

 二つのドラマに、共通する点が見てとれそうです。それは、スピード感。切り替えの多用。転換の素早さ。ハジケていく言葉と身体。個性的なキャラクターが次々に入れ替わり立ち替わり登場。両者ともに、ライク・ア・ローリングストーン的ドラマ、と言えるでしょう。

 従来のように、ストーリーをじっくりと追って犯人を特定したり、登場人物にじんわりと感情移入して一緒に悩んだり泣いたり、といったドラマの形にとらわれない。作り手と受け手の「運動神経」で楽しむドラマスタイルです。

 一方、こうしたハジけたドラマと相前後して、対照的な、従来手法によるドラマも始まっています。「さよなら私」(NHK火曜午後10時)。20年ぶりに再会した親友同士を演じるのは、永作博美と石田ゆり子。今は専業主婦と映画プロデューサー、対照的な生き方をしている二人。ところが、一緒に階段からころげ落ちた時、互いの心が入れ替わってしまう……。

 って、現代人が戦国武将になるのと同様、無茶苦茶な設定。まぁ、フィクションだから無茶は無茶としてありうるけれど。大林映画「転校生」のパクリなのか、それともパロディのつもりなのか。

「さよなら私」はスピード感も身体感覚も特筆すべき工夫がなく、ただ筋を追いかける旧来のドラマ手法。それでいていきなり、「はい、二人の人格は今入れ替わりました」とか言われても……見ている側には困惑が広がるばかり。

トピックス

財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト