同時に経済的な要因も大きい。ウォン安を背景に輸出で躍進した韓国経済は近年のウォン高と中国経済の減速で大ブレーキ。韓国貿易協会によると日韓関係の悪化で日韓輸出入総額は2011年の約1080億ドル(約13兆円)から2014年は約860億ドルに減少した。
今や日本の若者は嫌韓ムード一色だ。私の勤務する大学では韓国語を学ぶ学生が激減し、韓国への短期研修は希望者が少なく、今年度は初めて実施されなかった。
韓国観光公社などによると、2000年代後半300万人台だった訪韓日本人は現在200万人を割る勢いだ。代わりに増えた訪韓中国人はお目当ての品がなく、訪日時のような「爆買い」をしないので当地は潤わない。
焦った経済界から「やっぱり日本だ」との声が噴出した。昨年5月、ソウルで開かれた日韓経済人会議で韓国代表は「両国が1つの経済圏を形成し、ともに成長、共同繁栄の時代を構築すること」を提案した。会議では「日本を追い抜いた」との奢りから停止していた「日韓通貨スワップ協定」の復活や「韓国のTPP加入」などが議題となった。
米国と経済界から突き上げられた朴槿恵は孤立を怖れて渋々、日本との関係改善に動き、昨年11月、ソウルで就任以来初の日韓首脳会談を開催した。昨年末、朴槿恵への名誉毀損で在宅起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長の無罪判決、韓国憲法裁判所による1965年の日韓請求権協定は違憲との審判請求の棄却も今回の合意を後押しした。
●呉善花/1956年、韓国・済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。近著に『朴槿恵の真実 哀しき反日プリンセス』(文春新書)など著書多数。
※SAPIO2016年3月号