「スイーツやワイン、パスタ、雑貨、インテリア…と、『Hanako』発の流行が多く生まれましたよね。これは、女性が自由に“小金”を使えるようになったということ。働くってそういうことなんです。自由になるお金ができる。男や親にお伺いを立てて小遣いをもらうっていうんじゃなくて、自分が働いたお金を好きなように使うっていうのが走り出した時代なんですよ。加えて、自由で、自立していて、おしゃれで、かっこいい女性をドラマで演じた『W浅野』が女性たちのロールモデルになった。
モノやコトを売るには、女性のセンスが必要だと会社も理解し始めた。女は働く能力もあって、新しいことに敏感で、海外旅行もこなすバイタリティーがある、と。それはつまり女性が“情報強者”となったということなんです」(湯山さん)
1989年に出版された『お嬢だん』(中尊寺ゆつこ著・双葉社刊)でも、ソバージュヘアの『オヤジギャル』が、『アッシーくん』や『みつぐくん』を都合よく呼び出すシーンがよく描かれている。また、あつかましい中年女性を皮肉った漫画『オバタリアン』はアニメ化され、同年の流行語にも選ばれた。音楽業界でも、女性主導は健在で、『プリンセス プリンセス』など、ガールズバンドが一大ブーム。当時、中学3年生だったコラムニストの辛酸なめ子さん(41才)もその流行を享受していた。
「私も友達とバンドを組んで、プリプリ(プリンセス プリンセス)や米米CLUBの曲をコピーしていました。うちは校則がゆるかったので、美容院で“今井美樹さんみたいに”とリクエストして、ソバージュヘアに。白のブレザーに、チェックのパンツ、Kaepaの靴という、ダサいながらも渋カジを頑張っているような子でしたね。
冬になると、好きでも得意でもないのに、“みんなスキーに行くものだ”という空気に流され、何度かスキーに行きました。そして夜はディスコに行き、マドンナのヴォーギングを踊る──今思うと、ちょっとした黒歴史なんですが(苦笑)、私でもそれなりに遊んでいました。みんなをのみ込むような時代のパワーはあった気がします」(辛酸さん)
※女性セブン2016年3月31・4月7日号