彼が表舞台に初めて立ったのは、大学在学中のこと。2009年9月、バイオリニスト高嶋ちさ子(47才)のコンサートにゲスト出演した。裕哉が披露したのは、『I LOVE YOU』。彼の歌声を前に、感動して立ち尽くす観客が続出。裕哉の存在は、尾崎ファンの間で一夜にして語り草となった。
翌年にはFMラジオ番組で週1度、MCを務めることになる。前出の父は当時をこう振り返っていた。
「DJデビューのひと月前にも裕哉は実家に来たんです。あの時も遺品のギターを携えていました。今度は『僕が僕であるために』を歌ってくれてね。“オリジナル曲も作ってるんだよ”なんて話していたんです。早く聴きたいなぁとは思いましたけど、本人は卒業するまでは歌手活動はしないって言うもんだから。待ち遠しいもんですよ」
裕哉はその言葉通り、大学院を卒業すると、2015年に音楽活動を本格化させた。
「小さなライブハウスに出演するようになりました。彼は“音楽を通じて社会貢献がしたい”という考えが強く、ヒット曲を出して有名になるとか、ミーハーな部分がない。でも、あのルックスに歌声ですから、ステージに立てば、否応なく注目されるんです。音楽プロデューサーの間で、“尾崎の息子が活動を始めたらしい”という話はすぐに広まりました」(前出・音楽関係者)
昨年7月、裕哉は都心のカフェを貸し切ってパーティーを開いている。ここでも、彼の人間性が垣間見えた。
「母親への感謝から開いたパーティーだったんです。“自分が今ここにいるのは、女手一つで育ててくれたお母さんのおかげです”って。裕哉さんの言葉に、Aさんは涙したそうです」(前出・音楽関係者)
9月には人生初のツアーも予定されている。チャリティー関連の音楽イベントも考案しているという。前述、『音楽の日』で彼が2曲目に選んだオリジナルソング『始まりの街』は、優しいバラードだった。
《僕は幸せさ これまでも これからも あなたの笑顔を照らしてよ 導かれるまま二人は生きている》
《いつでも幸せさ あなたがいるから 遠い空から見守っている きっと》
父よ、聴いてくれていますか──真っ直ぐに前を見つめて熱唱する彼の姿に、そんな祈りが見えた。
※女性セブン2016年8月4日号