北川:はい。私は役者が決まってから書くというやり方で連続ドラマを書いてきたので、どうしても当て書きなんですよね。その人が見えないと書けないんです。
持論ですが、単発や映画など、2時間ものなら嘘がつけるんです。でも連ドラのように長丁場になると、どうしても役者の素が出てきてしまうんです。あまりに役者とかけ離れたキャラクターを作ってしまうと、嘘がつけないと思っています。
――斎藤工さんと原田知世さんの当て書きは、どういうところに顕著ですか?
北川:工君ってイケメンで、すごく頭の回転がいいのだけど、どこか不器用なんです。そういうところをユーリに移せないかなって思っていました。チャラチャラした振りをしているんだけど、全然そうじゃないというのが、すぐに見えてしまう感じです。
知世ちゃんは、人を受け止めるのが上手で癒されます。何回かご飯を食べたりしているんですけど、話下手な人の話も笑顔で聞き続けていて、懐が深いなと思いましたね(笑い)。
私が描く女性ヒロインは、『ビューティフルライフ』の常盤貴子さん、『ロングバケーション』の山口智子さんとか、強い感じの女性が多いんです。でも今回は、そうはならなかったですね。受け止めて励まして、というタイプの女性を、初めて書きました。
――カスミの勤め先が富裕層向けクリーニング店というのは、面白いですね。
北川:そういうクリーニング屋さんがあるのを知らなかったのですが、ある日、うちにお伺いに来たんです。そのクリーニング屋さんに取材をさせてもらったところから始まりました。
富裕層向けクリーニング店というのは日本に5軒くらいしかないようで、ドラマにあるように、著名人の服が集まっているんです。売り上げランキングも実際にあって、1位の人は年間500万円以上クリーニングに出しているのも事実なんですよ。何を出したらそんなにって思いますよね(笑い)。
だから、クリーニング屋さんが届け先のお金持ちと出会うというシチュエーションは、以前から思いついていました。
――カスミの息子、つぐみ(西山潤)に存在感があります。
北川:私には娘がいますが、体が強かったら本当はもう一人欲しくて、それがつぐみなんです。架空の息子をドラマに持ってきた感じです。今後の展開で、つぐみに想いを寄せているカメ子(久保田紗友)というオタクの女の子が登場しますが、うちの娘がモデルです。カメラがうまいので、カメ子です(笑い)。
娘に彼氏ができなくて、いつか彼氏ができたらいいなと思って作ったラブストーリーで、つぐみとカメ子のエピソードは、本当は、単独で話を考えていたんです。タイトルまで決めていたんですけど、今回のドラマに絡めて作品にしました。
――デザイナー考証の佐藤オオキさんは、北川さんが熱望していたそうですね。