◆予想外だった映倫の審査
小沼氏の初監督作品は『花芯の誘い』。レイプされて記憶喪失になった女の恋人と兄が、様々なレイプを仕組んで再現し、女の記憶を取り戻させる物語だ。主演はエキストラ派遣会社所属の女優・牧恵子だった。
「撮影初日は特に緊張しませんでした。とにかく新人の主演女優のことで頭が一杯でした」
映倫の審査で、絶対大丈夫と自信があったシーンが問題視され尺を短くする対応を迫られたが、監督デビュー作は1971年12月18日、ロマンポルノ第3弾として無事に公開された。
翌1972年には4本を監督。うち3本に出演したのが田中真理だ。
「巨人の大投手スタルヒンの血筋といわれる色白の美形でした。芝居を見て何かが足りないと思い、早く撮影が終わった日に飲み屋に誘うと、ビールを飲んで解放されたのか、よく喋り、魅力的な表情を見せてくれた。『そういう顔、カメラの前でしてくれなきゃ意味ないよ』と注文すると、翌日の撮影では伸び伸びと演じてくれました」
この年、田中は山口清一郎監督『ラブ・ハンター 恋の狩人』など主演2作がわいせつとして警視庁に摘発されたことで、秋の大学祭で引っぱりだこの人気者になった。翌1973年に退社したが、8年に及ぶ裁判では“エロスの女闘士”に祭り上げられた(1980年に無罪)。