1972年に『団地妻 忘れ得ぬ夜』(遠藤三郎監督)でロマンポルノ初主演を果たしたのが、ピンク映画界のスター女優・宮下順子だった。翌1973年、彼女主演の『四畳半襖の裏張り』(神代辰巳監督)を小沼氏はロマンポルノ史上最高の映画と評価する。
「神代演出の最高峰であり、僕の大好きな作品です。この作品は彼女を得たことで成功をおさめたと言ってもいいでしょう」
片桐夕子は小沼氏の唯一の時代劇『大江戸(秘)おんな医者あらし』(1975年)など4作に出演した。小沼氏の元妻でもある。
「一度男に惚れて、噛みついたら絶対に離さない一途さが夕子の“お家芸”。ロマンポルノの屋台骨を支えた女優ですが、NHKに出演したり、ATG映画の『鬼の詩』(1975年)に主演したりと、幅広く活躍しました」
SM作品でロマンポルノのスターとなるのが、ピンク映画界で女王の地位を築いていた谷ナオミだ。小沼氏は団鬼六原作『花と蛇』で谷と初めて組んだ。
「谷さんはSMの教養のない監督をよく引っ張ってくれました。縛り方で緊縛師と意見が対立した時も、彼女は緊縛師に『あなたもプロなら監督の言う通りやりなさい』と一喝。後日、二人きりになった時、『監督はもっとスタッフや役者に自信あふれる態度で接してほしい』と囁かれた。初めてプロの女優と出会った気がしました」
『花と蛇』に続き、谷主演の『生贄夫人』も大ヒットを記録。ロマンポルノの全盛期に貢献したが、1979年の結婚を機に引退した。
主演デビュー作『OL官能日記 あァ!私の中で』を撮った小川亜佐美も小沼氏が忘れられない女優の一人だ。
「別の監督が新橋のアルバイトサロンでスカウトし、僕が面接して出演が決まりました。演技経験ゼロでも、初々しさに色気もある。ベテランだと嫌がるキスシーンも、激しく相手の唇をとらえて離さず、相手役も大いに気が乗った様子でした」