●渡瀬恒彦(有田俊男役)
【やれんのう! わいらのやること、いちいちケチつけられたんじゃよう!】『仁義なき戦い』
『仁義なき戦い』シリーズを一言で表わすなら“下剋上”である。とりわけ、第1作において切れ味を発揮するのが、主要キャスト最年少だった渡瀬恒彦。若頭の坂井鉄也(松方弘樹)にヒロポンの密売を咎められると、全身に不機嫌さをまとい、上目使いで反論した。
【何すっかバカが、わしゃ怪我人じゃ!】『仁義なき戦い』
「実録」と銘打たれた本シリーズは、ふとした瞬間のリアルな、どこかコミカルな表情を描くことも抜群にうまい。車を暴走させた末についに逮捕された有田は、血まみれのままなぜか警官に対し「わしゃ怪我人じゃ!」と、何の言い訳にもならない雄叫びを挙げる。
【兄貴、戦争はもう始まっとるんで】『仁義なき戦い』
有田は、兄貴分の新開宇市(三上真一郎)を、旧知の市会議員と対面させた。議員は新開に、若頭の坂井鉄也を追い落とせと進言するが、新開は身震いするのみ。それを見た有田は「戦争はもう始まっとるんで」と、背中を押す。その後、有田は坂井の弟分を射殺した。
●小林旭(武田明役)
【広島極道は芋かもしれんが旅の風下に立ったことは一遍もないんでっ】『頂上作戦』
シリーズは、第3作の『代理戦争』から武田明役として小林旭が加入し、さらにオールスター映画の華やかさを増す。山守組の若頭として貫禄を見せる武田は、神戸の大組織・明石組に対して一歩も引かず「旅の風下に立ったことは一遍もないんでっ」と意地を見せた。
【借りは貸しを生むためのもんじゃ】『完結篇』
20年にも及んだ劇中の広島ヤクザ抗争は、もはや「切った張った」の時代ではなく、いかに「経済力をつけるか」の戦いであった。武田は「借金だらけ」とうそぶきながら、実は帳簿や博奕の貸し借り表など、きちんとした財産を組の発展のために残しておいた。
【わしらの時代は終わったんじゃけん】『完結篇』
武田は跡目を松村保(北大路欣也)に、広能昌三は氏家厚司(伊吹吾郎)にそれぞれ譲り、戦争の終結とともに一線を退くことを決意する。武田は「終わったんじゃけん一杯やらんかい」と広能を誘うが、広能は「死んだモンにすまんけんのう」と固辞した。
※珠玉の名セリフ100篇を詳細に分析した『仁義なき戦い 100の金言』(石田伸也著、徳間書店刊)、『仁義なき戦い Blu-ray BOX《初回生産限定》』(2万9800円+税/販売:東映/発売:東映ビデオ)が発売中。本編のほか、貴重なボーナスディスクやブックレットなどを封入。
※週刊ポスト2017年3月3日号