石破:いずれにしろ、陛下が時の権力者の道具になってしまえば、もう権威ではあり得ません。
小林:そうなんですよ。「ただ存在すればよい」なら、病気や認知症などで公務が果たせなくなってもかまわないという話になるでしょ。それでは天皇の権威が失われてしまう。
石破:それに対してはこんな反論がありました。「昭和天皇は最後の1年ぐらい病に伏せっておられたが、それでも国民は陛下を慕って、みんなでご回復を祈っていたではないか」というんです。存在自体が権威だからだ、といいたいのでしょう。
でも、それは違う。敗戦後、先帝陛下は広島や長崎をはじめ焦土と化した国土を巡幸され、懸命に象徴としての役割を果たされた。それがあるから、病に伏されてもみんなが慕ったんです。
小林:そうですね。しかし1年程度ならともかく、10年も認知症で表に出られなくなったら、どうなるのか。ずっと摂政が代役を務めるわけにはいきません。
●構成/岡田仁志(フリーライター)
※SAPIO2017年4月号