もうひとりパワーを炸裂させているのが、浅野温子。いきもの係事務担当の田丸(浅野)は、何かあると小走りで駆けつけて「ウフフー!」とうれしそう。イケメン刑事(三浦翔平)の捜査に勝手に付き添い、「行きつけのBARが…」と言われると、「ババア!?」と口をとんがらせる。こんな浅野温子、どっかで…と思ったら、そうです!『あぶない刑事』の真山薫です!!これはもはや彼女の芸風。誰に何と言われようと開き直って思いっきりやります!と清々しいくらいだ。
 
 この他、事情を聞きに行ったおかまバーの店名が「DEKA DANCE」、元刑事のママ(IKKO)が、「デカと捜査線は踊るものよ」と言い出したり、薄の妄想の中で須藤が女装して現れたり、薄に気がある係長(長谷川朝晴)のズッコケや須藤に憧れるドジな巡査(横山だいすけ)が出てきたりと小ネタもそこここに。エンディングは出演者プラス動物着ぐるみ集団のダンスもアリである。

 渡部はおやじギャグから女装、ダンスまで大奮闘。とにかく面白いことは何でもやろうとぐいぐい押す姿勢の裏には、フジテレビ日曜9時枠最後のドラマという事情もあるのかもしれない。9回裏、最後の攻撃、持てる力をすべて出し、思いっきりいこうぜ!ってことだ。

 思えば、日9は2010年、31年ぶりにドラマ枠として復活し、2011年、芦田愛菜と阿部サダヲ主演の『マルモのおきて』が大ヒット。以後、『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス』『僕とスターの99日』『家族のうた』などコメディ、ホームドラマ路線で同時間帯のTBSの日曜劇場と激突し続けてきた。(『マルモ』とぶつかったのは、『JIN-完結編』でしたね)そして2013年に一度バラエティー枠となり、2016年春再度ドラマ枠に。

 成長した芦田愛菜とシャーロット・ケイト・フォックスの『OUR HOUSE』、小雪の『大貧乏』などもあったが、前作、観月ありさ主演『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』から『いきもの係』はミステリー路線へと変化してきた。

 残念ながら日9枠ドラマはなくなるが、「開き直りってぐいぐい」は、今後のフジテレビドラマ復活のカギのひとつになるのでは。『いきもの係』はそれを示していると思う。

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