俊藤は富司純子の実父であり、寺島しのぶの祖父にあたる。社長の岡田茂と二人三脚で東映の全盛時代を築いたのち独立。俊藤が設立した「オスカープロダクション」制作部長を務めた川勝は、こんな裏事情を明かしてくれた。
「愛媛出身の大石さんは、岡山県で大石組を立ちあげてあそこまでになったけど、最初は金がなかったんです。そのしんどいとき、東映の俊藤さんが『金儲けしいや』言うて助けてやった。それが岡山市内で開いた『東映祭り』でした。そこに、健さんをはじめ、鶴(鶴田浩二)さんや若山の富(三郎)さん、文(菅原文太)さん、富司純子さんらを総動員した。体育館みたいなホールのステージに彼らをあげて歌わせると、会場はいつも鈴なりの満席。興行はいつも大成功でした」
芸能界では、この手のイベントを“花興行”と呼ぶのだそうで、興行の裏に暴力団組織がいると分かっていても、警察もさほどうるさくなかった。
「花興行の大きなアガリは祝儀です。大石組が仕切っているのは皆わかっているから、地元や周辺の会社の経営者たちが100万円以上包んで持って行く。山ほど祝儀が集まりました。東映祭りは年に2~4回やっていたから、大石さんは羽振りがようなって、『一生忘れへん、(東映には)恩返しせんといかん』と口癖のように僕に言うてはりました」(川勝)
芸能活動を梃子にゼネコン業界に睨みを利かせてきた大石組は、その資金力を武器に、山口組最高幹部にまで昇りつめた。
◆日大名誉教授に2000万円
ちなみに高倉健主演の『山口組三代目』(1973年公開)は、田岡の長男・満がプロデュースしている。実は、満の結婚を取り持ったのが東映の俊藤だ、と川勝がこう打ち明けてくれた。