【3】オープニング・主題歌の味わい
今回のオープニング・主題歌は、松たか子作詞作曲の「明日はどこから」。毎朝150回以上も聴かされる音楽だけに、朝ドラの主題歌は選定が難しい。
松たか子さんの歌は、最初は小さくそろそろと始まって、途中で転調し、ぐんと伸びやかになる。透明な声がいい。深い歌詞もいい。朝ドラの主題歌としてドストライク。
【4】時代を描くセットの繊細さ
役者たちが活躍する土台となる舞台セット。時代を詳細に映し、生活の雰囲気を描き出す最強の道具。前のNHK大阪制作・朝ドラ『あさがきた』でも、セットの効果がよく伝わってきました。
今回も、繊細なセットが素晴らしい。夏の居間では建具も敷物も透け感のある夏の「室礼(しつらい)」。
簾、夏障子、敷物は籐を編んだものとしっかり夏仕様。着物もきれい。仏壇も土間も台所の様子も細かく丁寧に仕立てられている。目を凝らせば凝らすほど、細部に工夫があり発見がある楽しさに満ちています。
【5】主題の「笑い」 その行く末とは?
では最後に、最大のテーマである「笑い」は?
今、日本のお笑いは転機を迎えていると言われています。ビートたけしさんは「お笑いブームは終わった」と言い、脳科学者・茂木健一郎氏は「上下関係や空気を読んだ笑いに終止し、権力者に批評の目を向けた笑いは皆無」と日本のお笑いを批判。芸人・マキタスポーツさんは「日本の芸人は理系化している」。ツッコミ屋ばかりでなく、もっとボケが必要なのだと危機を指摘しています。
たしかに、人の失敗をあげつらうようなツッコミ系の笑いはもはや飽きた。では、「笑い」の原点って何? みんながワッハっはっと笑える笑いなんて、本当にあるの? それはどんな笑いなのか?
もう一度、「笑い」の原点を示してくれるかどうか。吉本興業創設者の物語を半年かけて描く『わろてんか』に、思わずそんな期待をしてしまうのは私だけでしょうか?