片山:同時に排外主義も台頭してきました。在特会の設立が教育基本法改正と同じ2006年12月だったのも偶然ではないでしょう。
佐藤:在特会の登場まで日本にはやわなナショナリズムしか存在しないと考えられていました。けれど在特会は日本のナショナリズムの毒性が極めて高いことを証明した。彼らは特異な存在ではありません。保守のメインストリームともそれほど離れていないんです。
片山:おっしゃる通りです。日本のナショナリズムの根幹は、万世一系の神話に基づく国家の伝統的構造上、どうしても天皇の血筋に頼らざるをえない。そこから、人種、血統、民族の観念が他国の右翼以上に強固に形成されがちです。多民族を抱擁する伝統もあるはずなのですが、血統の純粋性の理屈が勝ってしまう。“五族協和”より“大和魂”なのです。在特会は、生まれるべくして生まれたとも言えます。
佐藤:私は在特会の暴力をこう考えているんです。戦前はテロリズムがひんぱんに起きたように暴力レベルが高い社会だった。それに比べて現代の暴力のレベルは極めて低い。だから在特会クラスでも十分に脅威になる。
片山:暴力の経験がない人が突然殴られたら驚いて卒倒してしまうのと同じです。でも暴力に自覚を持っているうちはまだいい。本当に怖いのは無自覚です。
佐藤:その意味で怖さを感じたのが、前原誠司さんが民進党代表時に訴えていた「All for All(みんながみんなのために)」【※注2】です。すべての人に例外なく負担を強いるという方法は、ソフトファシズムに繋がる危険性を秘めている。前原さんがその危険を認識していたようには思えない。その後、民進党が瓦解してそれどころではなくなりましたが。
【※注2/前原氏の政策ブレーン、経済学者の井手英策氏が考案した政治スローガン。公的サービスを充実し、格差是正のための増税の必要性を訴える】