とにかく小泉今日子はアイドル時代から“自立”していた。一人暮らしも早かったし、クルマの運転もしていた。戦略的というのではないけれど、彼女が発したなんてことはない言葉がトレンドになっていったものだ。たとえば「深夜のおにぎり買い出し作戦」。コンビニエンスストアが24時間営業になり、コンビニのおにぎりがポピュラーになったことに気づき始めた人たちが居たものの、女性アイドルが「深夜」に「コンビニおにぎり」を「買い出し」に行く「作戦」の後に、自室で何が行われるのかと、ファンよりも業界人が想像を膨らませた。もしかして、女子会の元祖は小泉今日子が作ったかもしれないと思うほどである。
実際、芳本美代子や観月ありさ、荻野目洋子など、後輩アイドルの中でも、ただカワイイだけではないタイプを小泉は好み、彼女らは「小泉組」と呼ばれていた。
すごく憶えているのは、小泉が観月に「ファッションショーのお仕事は、やったほうがいいんじゃない?」というアドバイスをしていたこと。いまでこそ、モデルはもちろん、女優としてのポジションを確立してもランウェイの出演歴をプロフィールに載せる女性芸能人は後を絶たないが、当時は、アイドルや女優、歌手よりモデルが格下だった時代。それでも、ファッショナブルであることがカッコイイと小泉は信じ、後輩にもそれを伝えていたというワケだ。
そして先日、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)で荻野目洋子から聞いたのは、小泉の運転するクルマの助手席に乗って、深夜、ドライブに出かけたという話。荻野目ちゃんから見た小泉は、本当にカッコイイお姉さんだったことだろう。
大人になってからのエピソードとしては、飯島直子やYOUが、小泉にビルを建ててもらって「みんなで一緒に住みたい」と言っていたことだ。姐御肌の小泉を慕っている女性のタイプを見ると、小泉の影響を大きく受けている者ばかりであることもわかる。
小泉今日子の個人会社『明後日』は、もちろん、彼女の名前に入る「今日」に絡めたものだろう。「明日」ではなく、さらに一日先の「明後日」で、読みも「あさって」としたところが、いかにも小泉らしいではないか。
人でも物でも、多くの人気を得るためには、ちょっと手を伸ばしたところに居たり、半歩先を行ったりすることだと言われてきたが、小泉今日子は、凡人が手を伸ばしても届かない、一歩ではなく二歩先を行く人なのだ。今回の一件で改めてそれがよくわかった。彼女はこの先、何を発進するのか? 目が離せない。