石田衣良氏が「不倫」を語る(撮影/平林直己)


石田:40代以上の大人の女性の欲望って、小説やマンガでもあまり描かれていない。その点で、この『恋する母たち』は本当に面白い。

柴門:相性のいいパートナーと安定したいい関係を築けるのが理想だけど、その相手を見つけるのがまた難しい。仕事とセックスは家に持ち込まないと豪語する男性は実際に多くいて、“女房なんかとセックスできるか”なんて夫の言葉を聞いてしまった奥さんが、『恋する母たち』のセレブ妻・まりなんです。

石田:実際にそうなってしまったら何をしても無駄だから、絶対ばれない相手とつきあうしかないよ。覚悟を持って、自分で責任をとれるなら不倫もしてみればいいじゃないと思うけどね。誰かを傷つけることになるというけれど、誰も傷つけないで生きることなんてできないんだから。

柴門:でもね、絶対にばれないと思って不倫してもダメになる人妻がいるわけですよ。舞い上がってバレバレになる、まりタイプ。だから杏もやめた方がいいとやめるわけで。彼女は専業主婦でリスクも大きいから、落語家の丸太郎に本気の恋をしても結局は踏み止まるんですよね。一線は越えない。まりが職業を持っていたら離婚して丸太郎に走ろう、と思うかもしれないけれども。

石田:丸太郎はいいよねぇ。あんな直球で気持ちをぶつけられたら、落ちちゃうよ。でも、一線というけれど、旅館に1泊して一緒にお風呂に入ったらもう、一線越えているよね。気持ち的には越えている。深夜にひとりで彼の独演会のDVDを観てさ。

柴門:DVDを観ただけで?

石田:男はセックス=一線でいいと思うけど、女性は違うかな。どこから不倫かというのは永遠のテーマだけど、女性は気持ちが動いたら、そこで終わりじゃないですか。

◆35才から45才ぐらいが「魔の時」だと思うんです

柴門:恋する理由って、悩みやさみしさもあるけど、男性からのアクションがあったら人妻でも恋に走りがちです。ある年齢までは子育てに必死で恋どころではないけど、35才から45才くらいが魔の時期。

 ちょっとしたアクションで恋心を思い出す。ちょっかいを出されたら女性の中にある恋愛の壺の蓋がぱかっと開いて、恋愛フェロモンが湧き出してよろめくんです。それがまりにとっての丸太郎。丸太郎のモデルには、少しだけ実体験も重ねたり…(笑い)。

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