若手女優と所属事務所の変化で、もう1つ見逃せないのは、「他の朝ドラヒロインは、同じ役を競うライバル」という意識が薄れていること。これまで朝ドラヒロインは、「清純派」というイメージを持たれやすいため、出演後は「キャラクターがかぶる同年代のライバル」と言われてきました。
しかし、最近では「ライバルより仲間」「争うより共存」という意識に変わり、テレビの番宣などで知り合うことも多く、プライベートでの交流も過去とは比べ物にならないほど増えました。同じ映画での共演も、女優は「〇〇さんが一緒なら心強い」、所属事務所は「リスクを分散できて安心」というのが本音なのです。
インタビュー後のオフレコトークだったので名前は出せませんが、ある朝ドラヒロインに「他の朝ドラヒロインはどう見ていますか?」と尋ねたところ、「同じ苦労と充実感を味わった同志のような存在」「将来、結婚して子どもを産めたとしても、ずっと女優を続けていきたいので、これから何度も共演していきたい」と言っていました。
かつては、「女優の旬は短い」「結婚したら人気は落ちる」と言われ、朝ドラヒロインですら「稼げるときに稼げ」という風潮があり、よほどの演技派でなければ第一線で活躍し続けることが難しかったものです。
しかし、現在は20代で結婚する朝ドラヒロインもいる時代になり、「結婚後も人気が落ちにくくなった」「助演にも脚光が当たるようになった」などのポジティブな変化が彼女たちの心にゆとりを与えているようです。
◆俳優もスタッフもボーダーレスな活動スタイルに
『累-かさね-』『コーヒーが冷めないうちに』のスタッフを見ると、さらに朝ドラヒロインをダブル起用した背景が浮かび上がってきます。
『累-かさね-』は、監督が『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』『ストロベリーナイト』『家族ゲーム』(すべてフジテレビ系)などを手掛けた佐藤祐市さん、脚本は『モンテ・クリスト伯 –華麗なる復讐-』『僕のヤバイ妻』『ようこそ、わが家へ』(すべてフジテレビ系)などを手がけた黒岩勉さん。
『コーヒーが冷めないうちに』は、監督が『アンナチュラル』『リバース』『砂の塔~知りすぎた隣人』(すべてTBS系)などを手がけた塚原あゆ子さん、脚本が『リバース』『Nのために』『夜行観覧車』などを手がけた奥寺佐渡子さん。
いずれも多くの名作ドラマを手掛けてきたスタッフであり、今回の両作にフジテレビとTBSが製作に関わっている様子がうかがえます。テレビ局としては、広告収入が厳しくなる中、映画収入への期待が大きくなっているのは間違いありません。朝ドラヒロインともなれば、情報番組やバラエティー番組へのプロモーション出演も歓迎されやすいなど一石二鳥であり、ダブル起用であればさらに注目度は上がります。