若いころ、サラリーマンにはなりたくないと思っていた砂田さんも、そんな自由を軽やかに守りながら、楽しむことを忘れず、テレビ業界を泳ぎまわった。それは、「わかっちゃいるけどやめられねえ」という心境だったことだろう。

 やがて、彼は「TBSの天皇」などと週刊誌に書かれるようになるのだが、もっと第一線の現場で遊んでいたかったのではないだろうか。46歳で渡辺プロダクションに転職。その後、独立して製作プロダクションをつくったが、バブル崩壊とともに倒産した。砂田さん自身も自己破産している。

 このころ、3回目の結婚が破たん。66歳で4回目の結婚相手となる女性と出会ったのは、救いだった。どん底からもう一度立ち上がろうと思ったときに、この女性の顔が浮かんだという。

 健康にも陰りが差し始める。2008年に膿疱性乾癬という難病になり、2013年には脳梗塞で倒れた。

 しかし、砂田さんはめげていない。

「どんなに逆境になっても、これで終わりという絶望感はないです。ちょっと抜けているんですね」

 病気を経験しなかったら、好き勝手なことだけで一生を終えてしまった。病気になって「生まれ変わったような視点」で物事をみることができるようになったという。

 伝説の歌姫ちあきなおみのリサイタルも手掛けている。持ち歌以外に、シャルル・アズナヴールの「帰り来ぬ青春」や、ぼくの大好きなブルースの女王・浅川マキの「かもめ」などのカバーは、聞きものだ。2000年発売のちあきなおみの6枚組CDボックス「これくしょん~ねえあんた」は累計10万枚を売り上げる。

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