高倉健さんもそういう考えの人で、髪を切るのも、服を買うのも、メシを食うのもいつも同じ店だったらしい。あの人の場合、「俳優・高倉健のイメージを崩さない」っていう、もうひとつの大きな目的もあっただろうけどね。まァ、芸能人ってのはそれくらい世間の目を意識できなきゃダメなんだよ。
◆キャディに「上から目線」は下品
オイラはよくゴルフに行くんだけど、絶対キャディに文句をつけない。グリーンを読み間違えたり、キャディの言う通り打ってバンカーや池にハマっちまったりしても絶対にブーブー言わない。で、いつだってチップを渡すからね。
よく他の芸能人の話をキャディから聞くんだよ。 「俳優の〇〇さんはちょっと調子が悪いとすぐキャディに当たる」とか「タレントの△△さんはマナーが最悪で本当に下品なの」とかね。ひとりのキャディがそう言ってるってことは、ゴルフ場のキャディ全員がその話を聞いてると思ったほうがいい。
で、キャディが家族に話す。その家族が職場や学校で話す。つまり、ひとりのキャディに悪態をついたことはねずみ算式に噂になって、最終的には100人、1000人という単位で広まっていくんだよ。それがいつかヤラかした時に一気に爆発する。そう考えると、人気商売ってのは本当に怖い。「調子に乗る」ってのが命取りになる。
調子に乗ってる若手ってのは、きっと「自分は代わりのいない存在」だと勘違いしてる。だけど今や、芸能界にはそんな存在はほとんどいない。昔の高倉健さんや石原裕次郎さんみたいな不動のスターは、もう絶滅したようなもんだよ。
18歳成人なんて動きとはまるで逆で、今や30代や40代の男すらガキみたいに見えちまう。「高齢化社会」ってのは実は「大人の幼齢化社会」なのかもしれないな。
※ビートたけし・著/『「さみしさ」の研究』(小学館新書)より