「Aさんが考案したのは、元本保証型の定期預金で、『年6.3%の金利がつく』という売り文句でした。今やメガバンクの定期預金の金利が約0.01%ですから、600倍以上の高金利です。
そんなおいしい話があるものかと眉唾になって当然ですが、Aさんは『企業の売掛金を安く買い取って儲ける“ファクタリング”という仕組みを導入したから絶対に大丈夫です』『ファクタリングは1970年代に誕生した資金調達方法で、欧米では広く浸透しています』などと言葉巧みに売り込んだんです。さらにAさんが提示した会社の預金口座には約10億円もの残高があったので、元本保証は嘘じゃないと思ってしまった」
この被害者のようにA氏を信用してしまったのが、西内の母親だ。
「まりやちゃんのお金を管理していたお母さんは、家族の将来のことを考えて、まりやちゃんの貯金を運用しようと考えていました。そして、ひろさんの交際相手だったBさんに相談したところ、『ぼくは始めましたが、責任はとれませんよ』と言われたそうです。しかし、お母さんはこの金融商品が“優良な投資先”と思い込み、5000万円を注ぎ込んでしまった。
最初は確かに利息が振り込まれた。すっかり信用したお母さんは、この商品を友人たちに紹介したのです」(前出・西内の知人)
◆ミュージカル俳優、人気アイドルも…
友人たちは西内の母親の紹介を受けて、この“高金利預金”に手を出した。総額で約5000万円集まったという。当初は利息が支払われたが、徐々に雲行きが怪しくなった。
「2018年になると利息が振り込まれる人とそうでない人が出てきました。その後は段々と不安が募って、出資者がまりやちゃんや彼女のお母さんに『本当に大丈夫ですか?』と問い合わせる回数が増えていった。でも『心配いりません』と言うので安心していました」(前出・西内の知人)
実際はこの頃、A氏の会社は危機的な状況を迎えていた。A氏を知る関係者が語る。
「実はAさんは、起業した時点でまだ大学生で資産運用の経験がほぼなく、事務所もレンタルオフィスでした。いつまでたっても利息が支払われないことに焦った出資者が直接問い合わせても、Aさんは『事業が軌道に乗れば必ず返します』の一点張りで追及を逃れていました。
しかし、本当にAさんの会社がファクタリング業務を行った実態があったのかどうか。新たな出資金で利息を補填するだけの自転車操業だったのではないかと疑われています」
約束が果たされず、不信感だけが増すなか、西内は母親が巻き込んだ人たちを慮って、心労を重ねていった。一方で、A氏も資金集めに躍起になっていた。彼は西内家以外にも芸能界からの資金集めを考えていたという。被害者のなかでは、こんな噂が独り歩きしていた。