韓国で様々な事業を営む許氏

 両事件で計13年の懲役刑が確定した許氏は、2005年に黒羽刑務所(栃木県)に収監されるも、2012年に母国・韓国での服役を希望し、ソウル南部矯導所(刑務所)に移送。翌2013年9月に仮釈放され、いまはソウル市内で家族と暮らしている。

 許氏の存在は、日本の政財界にとって“忘れたい過去”といえるかもしれない。イトマン事件や石橋産業事件では、数々の大物政治家や財界人の関与が取り沙汰された。彼らを繋ぎ、暗躍したとされる許氏に多くの責任をかぶせ、事件に蓋をした側面もある。「すべての事件は、私の“生い立ち”を抜きにして語れない」と語る許氏の言葉には、強い意志がこもる。

 令和という時代を迎えたいま、昭和、平成の犯罪史に残る経済事件、そしてその後の運命について語ることは、「在日として生きた証」を刻み残す自らの使命である──そう前置きして、許氏は語り始めた〉

◆貧困の土地で培われた人脈

 大阪市大淀区中津(現・北区)。私の人生は、この地から始まりました。大阪駅の北側は、今でこそ高層ビル群が建ち並ぶ近代的な街並みですが、かつては広大な貨物駅や場外馬券場が広がる味気のない土地でした。煤けたトタン屋根の木造家屋が密集する。私が生まれた当時、中津はすり鉢の底のような極貧のスラムでした。差別される者たちが肩を寄せ合って生きており、貧しさゆえの悲しみを皆が共有していました。

〈中津の地には、日韓併合後、祖国で職を失って日本に渡って来た在日韓国・朝鮮人が共棲していた。その中には強制的に連行・徴用された人々も少なくなかったという。許氏は敗戦間もない1947年2月24日、7人きょうだいの3男として生まれた〉

 父親は戦前に釜山から日本に渡ってきた在日一世です。母親は無学で文字も読めませんでしたが、生活力に満ち、働き者で逞しい女性でした。

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン