野上の人的補償で西武に移籍した高木勇人は結果を残せず、今年限りで自由契約になったが、過去に巨人から人的補償で出て行った選手が活躍するケースもある。2012年、村田修一の代わりにDeNAに渡った藤井秀悟はチーム2位の7勝を挙げた。最も活躍したのは、2014年に大竹寛の代わりに広島に移った一岡竜司だろう。その年に31試合に登板し、防御率0.58と好成績を残し、2016年からの広島の3連覇に中継ぎとして大きく貢献した。他にも2017年に山口俊の代わりにDeNAに行った平良拳太郎は昨年、今年と2年連続5勝を挙げ、先発の一角に食い込もうとしている。
一岡という開花直前の若手を失った反省を踏まえて内海哲也、長野久義というベテランをプロテクトから外した昨年、西武と広島に持っていかれ、内外から疑問の声が挙がったという苦い経験もある。
「たしかに2人は今年活躍できませんでしたが、生え抜きのベテランを失うことはファン離れにも繋がるし、フロントもできるだけ避けたいと思っているでしょう。昨年の例があるため、今年は知名度の高い選手を守りにいきたくなる。ただ、澤村拓一のようなベテランをプロテクトすれば、伸び盛りの若手全員を守れるわけではなくなる」
仮に巨人が鈴木大地と美馬を獲れば、人的補償で2人の選手を失う可能性がある。他球団が獲得したくなるような選手で、プロテクトを外れそうなのは誰か。
「開幕投手経験がありながら伸び悩んでいる宮國椋丞は、来年28歳を迎えますし、現在の投手陣を見ると、プロテクトから外れる可能性は考えられる。また、今年のシーズン途中に日本ハムから獲得した藤岡貴裕は生え抜きではないうえに、30歳という年齢もあるので、どう評価されるか。移籍後、藤岡は1軍登板こそなかったが、ファームでは4勝を挙げ、安定感のある投球を見せていました。若手とは言えない年齢ですが、野村祐輔(広島)、菅野智之(巨人)とともに『大学ビッグ3』と呼ばれた逸材が開花する可能性もないとは言えない」