百恵のラスト曲がオリコン最高位4位ながらも初登場は14位だったように、当時はランキングが徐々に上昇していく時代だった。しかし、『ハッとして!Good』はいきなり1位を獲得。今では当たり前になっている“ジャニーズ事務所のオリコン初登場1位”は同曲が初めてだった。
宮下氏はアイドル・田原俊彦の持つ“王子様感”を歌で表現。甘くて、キラキラ感を醸し出す歌詞を散りばめた。作詞の秘訣をこう語っている。
〈田原クンのを書くときは、少女マンガを読んだりしますね。ローティーンの女の子が男の子に抱くあこがれみたいなものがわかるから〉(1985年1月11日号『an・an』)
彼女の経歴は鮮やかだ。4歳からピアノを始め、8歳で『ジュニア・オーディション』ピアノ部門に入賞。学習院高等科1年の秋にワシントンに音楽留学すると、17歳で『ワシントン・ミュージック・ティーチャーズ・コンテスト』に優勝。18歳で『ショパン・ヤング・コンテスト』で全米2位に。1979年5月にサンフランシスコ音楽院ピアノ科を首席で卒業している。宮下氏には、日本ではなくアメリカの教育方針が合っていた。
〈子供のころからピアノをキチッと譜面どおり弾かない、自分流に弾きすぎる、といって先生に叱られたけど、アメリカでは、そこを逆に誉められたの〉(1981年12月10日号『週刊文春』)
宮下氏は『ハッとして!Good』以降も、曲中に田原が笑い出すという空前絶後の『ブギ浮ぎI LOVE YOU』、NHKのど自慢で合格したような効果音を入れた『キミに決定!』、1920年代にアメリカで一大ブームになったダンス“チャールストン”のリズムを取り入れた『チャールストンにはまだ早い』など“田原俊彦にしか表現できない歌”を次々と提供。ディレクターの羽島氏、編曲家の船山氏とともに、田原独特の世界観を創出した。
〈偶然、トシちゃんのキャラクターに私の感性があったんだと思います。だから、すごく感覚的に書いた詞があたってしまった。売れる、売れないというのは、ワリとそのときの思いつきやノリなんですよ〉(前掲『an・an』)