“ヒモ夫”という揶揄にも人知れず苦悩した(撮影/浅野剛)

「世間から“ヒモ夫”のような扱い方をされるのが悔しくて。ストレスになっていました。肩の力を抜いて、自分らしく生きればよかったのだと思うんですが、それができなかった。

 次第に、不安や孤独を紛らわすためにも薬物を使うようになりました。最初は、使用頻度をコントロールしていたし10年間使わないときもありましたが、いつの間にか制御不能になっていた…薬物をやる口実のために、わざわざストレスを探し出すようになっていました。明らかに、薬物依存だったと思います」

 夜の街で遊び歩き、不倫にも走るようになる。

「おれが憧れた人の中には、奥さんがいながら、かわいい愛人を連れている人がたくさんいました。そのうちの1人に、“完全犯罪にすることが、妻への最大の愛情だ”って教えられ、自分もそれを言い訳にしました。偽物のスケジュールを書いたアリバイ手帳を作り、不倫を繰り返した。いま考えれば、本当に薄っぺらい。上っ面だけを見て憧れて。けれど、当時はマネするしか能がなかったんです。おれの人生には、正しい“教科書”が誰ひとりとしていなかった。いたのかもしれませんが、目に入らなかった」

 不倫は薬物依存に拍車をかけた。高知は不倫相手の女性とともに薬物に溺れていった。

「薬物で怖いのは、相手がいると、自分がやめたいと思っても絶対にやめられないこと。“このままだと、人生が終わる”とわかっていても、やめられなかった」

 憧れの人にすすめられて始めた薬物が、ストレス解消の道具になると同時に妻に対する後ろめたさの原因にもなり、それがさらなるストレスとなって、また薬物に手を染める。そんな悪循環に陥っていた。

「逮捕された瞬間は、どこかホッとした気持ちがあった。“ああ、これでクスリをやめられる”って。麻薬取締官に、“逮捕してくれて、ありがとうございました”と伝えたことが報じられましたが、これは事実なんです」

 高島に対する罪悪感はいまも消えていない。逮捕後、高島は謝罪会見を開き、涙ながらに夫の不始末を詫びている。

「その会見の様子は、留置所で弁護士から“涙ものだ”と聞かされました。勝手ですが、彼女の傷を増やさないために、留置所の中から弁護士を通して離婚届を渡したんです。手紙も添えました。でもそこから彼女が判を押して離婚が成立するまで、かなりの日にちがかかった。彼女なりに、おれのことを考えてくれていたのだと思います。

 実際に会見の様子を見たのは、出所してからです。おれのことなんていくらでも悪く言えばいいのに、“同志でもあったし、親友でもあった”と言ってくれていた。あの言葉は、おれへのエールだと思っています。約18年間一緒に過ごしてくれた彼女には、感謝の気持ちしかありません。その恩に報いるためにも、生き直したいと思っているんです」

 逮捕されてから現在まで、高島とは一度も会っていないという。

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