「慎重な判断が必要とされるデリケートな問題です。感染防止の観点からいえば、部屋を公表すべきだといえる。ただし、相撲部屋の場合、所在地に加え、親方やすべての所属力士の名前などが公表されており、彼らの住居も兼ねている。個人のプライバシー、人権を守る観点も必要ではある。親方や関取の名前だけ公表しているのは、協会から給料をもらっているという社会的責任を鑑みた基準でしょう。
問題はそうした基準について説明を尽くせているかということ。基準の説明が不十分なまま一部の情報だけを出していたら、部屋の周辺住民にも不安が募る。本来は、差別的な扱いが起きないように地域住民の理解を得るなどの努力をしながら、できる限りの情報開示をしていくことが求められる。それが社会全体で感染予防に取り組むことへの貢献になる」
説明なき情報コントロールは、相撲部屋への不信を招きかねないのだ。実際、東京・江東区にある高田川部屋の目の前にある共同ゴミ置き場には、誰が貼ったか記されていない〈当分の間(一カ月位)、ゴミの集積は中止します〉との張り紙が貼られ、周囲の住民から訝しがられている。
改めて協会に高田川部屋の感染状況、クラスター公表の基準について質問状を送付したが、対応窓口は自動音声アナウンスが流れるのみで回答は得られなかった。
こうした八角体制の組織運営に、内部からも疑念の声が上がる。若手親方のひとりはいう。
「3月の春場所の無観客開催も10人の理事での投票は賛成6、反対4と拮抗した。夏場所だって、ぶつかり稽古などの禁止が通達されている状態なのに、いきなり本場所の土俵に上がれるはずがない。発表が遅すぎる」