江夏は打者としても鮮烈な印象を残した。2回に回って来た2死一、二塁の打席で3球目を右翼席中段に叩きこんだ。打たれた米田は、前年までに286勝を挙げていた球界の大エース。試合前の始球式は、米田の長男が務めた。米田は半世紀が過ぎた今でも悔しそうに語る。
「ああ、あの試合か。ボウズの前で江夏に3ランを打たれたことしか思い出さんわ。当時のパ・リーグは監督も選手も、みんな人気があって給料もよかったセ・リーグに負けたくないという気持ちで、ランナーに出ても相手とは話もせんかったもんや。なにせ、(ドル箱の)巨人とオープン戦を組んでもらうのに四苦八苦してた時代やからねえ」
※週刊ポスト2020年6月5日号