大阪府在住の会社員・本橋紀子さん(仮名・30代)は、不倫をされた側にも問題があるという考えを理解できないわけではないが、やはり納得いかないと言う。
「夫の浮気が発覚した時、もっと女らしくしないとその気にならない、と言われました。子供が生まれてからは、仕事と育児に忙殺され、確かに美容やオシャレに気を使う暇がなくなりました。夫から求められても、本当に疲れていて拒否する日もありました。私としては共働きだし、家事も子育ても分担できていれば、自分自身のことにも気を配れる時間もあったはず。夫はそういうことをせずに自分の要求を通そうと、私への命令ばかりしてくる。もはや夫婦生活云々以前の問題でした」(本橋さん)
妻が相手をしてくれないから、という浮気男の言い訳も、実は浮気男が自ら作り出していた原因こそが問題ではないか、という示唆に富んだ指摘である。
男が浮気をするとき、浮気された妻側に原因を見出そうとする人たちは、他にこのような見方も開陳する。
「グルメな男にとって、美人は飽きる。毎日ステーキが食べられないように、今日は魚、明日は野菜、たまには珍味だって食べたい。こういう欲望を否定することはできないはず。美人妻に課せられた宿命のようなもの」
つまり渡部の場合は、妻が佐々木希という誰もが認める美人だったから良くなかったというのだ。ただの言いがかりにしか聞こえない、女性だけでなく、男性から見ても身勝手な見解を披露するのは、女性経験の多さが自慢の自動車販売店経営・結城一也さん(仮名・40代)。食欲、睡眠欲、性欲は人間の三大欲求と言われたびたび並べられるが、現実に起きた笑えないスキャンダルについてまで性欲と食欲を同列に見做すのは、あまりに下劣という他ない。
腹が空けばあるものを片っ端から食べる、性欲の赴くままに異性に手を出すというのは、人間の世界では犯罪にもなりうる。さらに浮気されるのは「美人の宿命」という部分からは、妬みや僻みから発せられた差別意識さえ垣間見える。やはり「浮気男の詭弁」以上でも以下でもないのだ。
浮気した側ではなく、浮気された側に原因があるのだという主張をする人はまだ続く。渡部の場合は芸人と人気女優という「夫婦間格差」があり、妻の「仕事」ゆえに起きたのだというアクロバティックな擁護論を展開するのは、神奈川県在住の出版社勤務・望月章吾さん(30代・仮名)である。
「渡部さんは人気芸人でモテるが、妻が有名人であるからおおっぴらには遊びづらい。一方の奥さんは人気女優でモデル、仕事でもイケメンばかりと会っているはずで、旦那の渡部さんとしてはそういう気苦労も多かったはずで、それが爆発したのでは? 奥さんが仕事を辞めて家庭に専念し、夫のことをもっと夫として立てていれば、こういうことにはならなかったはずですよ」(望月さん)
妻が忙しく人気の仕事をしていたからだという望月さんの言い分は、憶測と決めつけによる「妻批判」に過ぎない。しかも、女性とは「かくあるべき」であり、そうではなかったらから夫が失敗してしまったという凝り固まった価値観が発露されており、才能ある女性の自我を認めない不愉快な姿勢だ。