安倍首相が後継者の人選を見誤ったことで、細田派、麻生派の主流派から我も我もと“自称後継者”が出現して政権に遠心力が働いている。
それだけではない。コロナ危機は総裁レースの様相を一変させた。岸田氏に次いで首相の覚えがめでたい総理候補とされていた加藤勝信・厚労相はコロナ対策が後手後手に回って評価を下げ、茂木敏充・外相も外交場面そのものがなくなって存在感を失い、レースから脱落しかかっている。
◆石破総理だけはマズい…
それでもなお、安倍首相は岸田後継を諦めていないとされる。理由は「石破さんだけは絶対に総理にしたくないから」(安倍側近)という。
ポスト安倍では岸田氏が地盤沈下する一方で、首相の「政敵」である石破茂・元幹事長が最右翼に浮上し、新聞の世論調査の「次の総理にふさわしい人」で他に水をあけて1位に位置している。
官邸が警戒しているのは総理・総裁選びと検察の動きが連動することだ。河井克行・前法相と案里夫妻の選挙買収事件をめぐる東京地検特捜部の捜査は、自民党本部から夫妻に流れた1億5000万円の“買収資金”の流れの解明を目指している。ターゲットは自民党首脳部だ。
公選法では、「買収行為をさせる目的をもって金銭・物品の交付を行った者」も「買収交付罪」に問われる(221条)。自民党側で河井夫妻に1億5000万円もの資金を交付すると決裁した者にも捜査が及ぶ可能性があるのだ。