せつなさにあふれた『コントが始まる』
夢に向かって走り続ける若者たちの友情と恋愛。青春時代の「終わり」がテーマのドラマだ。同じ高校で売れるお笑い芸人を目指して「マクベス」として活動した3人の男子(春斗・菅田将暉、潤平・仲野太賀、瞬太・神木隆之介)が主人公。彼らの夢が敗れて、解散するまでの葛藤を描いている。
実家の家業を継ぐのかどうか、恋人と結婚するかどうかなどで揺れ動き、結成10年経っても売れないとして「マクベス」は解散する。お笑いを心底楽しみながらも実現できそうにない「夢」との間で、仲間同士のコミュニケーションもギクシャクするようになる。
ファン歴1年あまりで「マクベス」にハマってしまった元OLのファミレスのアルバイト店員・里穂子を有村架純が演じる。里穂子自身もマクベスのコント動画を見る以外にはこれという趣味も生き甲斐もなく、仕事に張り合いを持つこともできない「居場所のない」人間だ。
里穂子がマスベスを解散直後の春斗(菅田将暉)に語りかけた言葉が圧巻だった。
「今後どんなに面白い方たちが現れても、私にとってマクベスの三方だけは特別なんです。がんばっている姿も、悩んでいる姿も、もがいている姿も、見てしまっていますし、私個人的には一番苦しい時を支えてもらいましたので、マクベスが解散しても、あなた方が精魂込めて作り上げたコントはこの世から消えることはありません。動画としてもしっかり残り続けるでしょうし、何より、ファンの記憶の中にしっかりと残り続けていきます。私はこれからもあなたが書いたコントに、あなた方が作り上げたコントに何度も助けてもらうことになるでしょう。もしかしたら笑ってみる機会よりも泣いて見てしまうことの方が多いのかもしれません。それでもお約束いたします。これからもファンでい続けることを……」
10年間、一緒に夢を見続けたメンバー3人の関係は濃密で、誰も立ち入ることができない強い絆があることが見てとれる。「昭和」の時代にあったような暑苦しいほどの濃い男同士の関係だ。
結果としては当初の「夢」はかなわなかった。芸人として売れること、大勢の人たちにウケること、それは結局できなかった。でも最後の里穂子の言葉は、それよりも大事なことは何かを見るものに問いかけてくる。