ドラマの主旋律は新婚の息子・娘夫婦の別れる、別れないというお決まりのパターン。だが、伏線として2組の親世代が互いの関係を見つめ直す「熟年離婚」も副テーマになっている。旅館で働くようになった薫は息子の紘一に告げる。
「ずっと私は“お父さんの妻”でも“紘一の母”でもなく、1人の人間としての居場所が欲しかったの。これからは本当の意味で自分の人生を生きていく。私、今、とっても楽しいの」
最終回では、薫が働いている旅館で後を追うように働き出した正が元妻に復縁を迫る。自分の非を認める正に対して、薫はきっぱりと言う。
(薫)「残念ですが、もう元の夫婦には、戻れません」
(正)「だよな…」
(薫)「でも、違う関係なら……。人生100年という時代ですから、時間はまだあります。これからたくさん、2人の思い出が作れるのかもしれません」
頭を下げて元妻の手を握る正。手を握り合う2人が印象的だった。
夫と妻。そういう形にとらわれない新しい人間関係を作ることができる可能性を示唆するエンディングだった。若者たちは、自分の親世代を描いたこうしたシーンにも「キュンキュンした」のだと言う。昭和の時代のスタイルは通用せず、令和の時代になった今、新たな男女のあり方を描いたドラマには若い世代も反応することを知った。