これまで国内では、毒性を弱めたウイルスを投与する「生ワクチン」や、感染能力をなくした「不活化ワクチン」が使用されてきた。これに対し、ファイザーとモデルナが提供しているのは、ウイルスのたんぱく質の遺伝子の一部を脂質の膜で包んだ「m(メッセンジャー)RNAワクチン」と呼ばれる新しいタイプのワクチンだ。
これを体内に注入すると、脂質に包まれた遺伝子が人体の細胞に取り込まれ、その細胞が新型コロナウイルスの表面に存在する突起状の「スパイクたんぱく」を作り出すようになる。そして、そのスパイクたんぱくを免疫細胞が認識することで、対応する「抗体」ができるとともに、ウイルスに感染した細胞を攻撃する「細胞傷害性T細胞」が活性化される。それによって、新型コロナの発症や重症化を防ぐとされている。
しかし、人為的に体内にできた「スパイクたんぱく」が、害を及ぼしている可能性があるというのだ。新型コロナワクチンのリスクに関する医学論文を調べ、ブログで解説している免疫学者、荒川央氏(イタリアの分子腫瘍学研究所に所属)が解説する。
「スパイクたんぱくには血管の内皮細胞を傷つけ、血栓を作りやすくする作用があるという研究報告があります。人間の体には無数の毛細血管が張り巡らされています。どこに血栓ができるかによりますが、毛細血管が広範囲に詰まればその先の臓器や神経が損傷し、さまざまな症状が出ると考えられます。
また、新型コロナウイルスは、スパイクたんぱくを細胞表面にある『ACE2受容体』に付着させて、細胞に侵入することが知られています。このACE2受容体には、実は血圧を下げるホルモンを作る役割もあります。
ワクチンによって人為的に作られたスパイクたんぱくも、当然、ACE2受容体に付着しますよね。そのため、血管が収縮することにより血圧が上昇してしまう。つまり、血栓ができるうえに高血圧リスクが上がることで、余計に血管が詰まりやすくなると考えられるのです」
血管への攻撃に加え、免疫細胞の“誤作動”が起きている可能性もあると荒川氏は指摘する。
「注射後、遺伝子を包んだ脂質粒子は、さまざまな臓器や組織の細胞に取り込まれます。そこでスパイクたんぱくが作り出されるわけですが、そうした細胞を、ワクチンによってできた『抗体』やワクチンによって活性化された『細胞傷害性T細胞』が標的にしてしまう可能性が考えられます。
また、抗体がスパイクたんぱくに類似したたんぱくをもつ細胞を、ウイルスと勘違いして攻撃してしまう(自己免疫疾患)。そのようなメカニズムで、臓器や神経の損傷が起こり得ると考えています」
感染後に起こるコロナ後遺症とともに、ワクチン後に起こる数々の症状のある患者を診療している横浜かんだいじファミリークリニック院長の河野真二医師も、ワクチンによって作られるスパイクたんぱくが症状の一因ではないかとみている。
「コロナにかかった後、ワクチンを打った人の中に再感染したかのような症状が出るケースがあります。特に倦怠感や発熱を訴える人が多いが、感染後の嗅覚や味覚障害から回復した人が、接種後再び同じ症状に悩まされることもある。ブレインフォグに似た症状も感染者、接種者ともに出ることがあります。こうした症状が接種後にも起こることを考えると、ウイルスそのものが直接悪さをしている部分もあるとは思うが、直接的か間接的かはわからないものの、両者に共通するスパイクたんぱくも主たる一因なのではないかと思うに至っています」