3つ目は、それとなく教えながらフォローしていること。2人は相手の話を補足するように、「そう言えば○○らしいよ」「何かで見たけど、○○みたいだね」とそれとなく伝えてフォローしています。後輩タレントに、自分の知識を誇るように教えるのではなく、相手の話を助け盛り上げるためのトークを挟んでいるだけなのです。
4つ目は、立ち位置の微調整。2人には相手の話に「分かるわ」「そりゃそうだよな」などと共感の言葉を返し、素の表情をサラッと見せるなど、同じ目線で聞こうとしています。「大物」ではなく、「親」「中年」「いちタレント」「一人の男」など、相手に合わせるように立ち位置を変えているのでしょう。特に清原和博さんや板東英二さんの話を聞いていたときは、戦友のような雰囲気を醸し出していました。
ダウンタウンがこのような聞き方をするようになったのは、やはり家庭人としての一面が大きい気がします。松本さんは昨年あたりから積極的に家族の話をするようになりましたし、浜田さんも昨年の浮気騒動で妻から「意気消沈ゴリラ」と言われた後は、良き夫を思わせる温厚なキャラに徹しています。だからこそ司会を務めながらも、「自分が目立つより、出演者を引き立てよう」という心境になり、聞き役に徹しているのではないでしょうか。
どこか一歩引いたその姿は、かつて今田耕司さんや東野幸治さんら後輩芸人を厳しい目で鍛え上げていたころとは全く異なるもの。90年代、ダウンタウンは、お笑いビッグ3(タモリさん、ビートたけしさん、明石家さんまさん)に続く存在として、今では当たり前になった“コンビ司会者”という形を定着させました。盟友のウッチャンナンチャンは別々で司会するようになりましたが、ダウンタウンにはずっとコンビ司会者として出演者のトークを聞き出してほしいと思っています。
【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。