山口百恵さん(57才)は結婚と同時に芸能界引退をしたが、聖子は仕事も家庭も手放さなかった。それなのに娘・沙也加が4才の時に、娘を実母に預けてアメリカへ渡った。今でさえ母親が自分の道を歩こうとすると猛バッシングされるゆえ、当時の聖子への風当たりはすさまじいものがあった。
しかし聖子は、世間の目にも声にも一度も動かされることはなかった。そういった彼女の選択は、その後のさまざまなシーンでも一貫しており、私たちはそのつど目の当たりにし、そして心をかき乱されてきた。
「置かれている環境や、物足りなさを誰かのせいにしてしまったとき、それがその人の限界だと思うんです。聖子さんは失敗をしても、誰のせいにもしなかったのではないでしょうか。たくさんの触手を持って、自分の中でいろいろと考え、そのつどしっかり根っこを張っていく。その根っこが自信となって今の彼女を作っているんだと思います」(あさのさん)
聖子ほど大きくはないものの、私たちは日々小さな選択を迫られる。だからこそ、ブレずにいられることのすごさに身を震わせる思いなのだ。
「ある選択をしたときに、後悔することがあるかもしれません。私はなんで仕事を選んだんだろう、結婚したんだろう…と。でも、そうして揺れていいと思うんですよ。価値観はその時その時変わることもありますし、ある選択をしたことで自分の価値観がわかることもあります」(あさのさん)
必要なのは、その時にきちんと考え直すこと。途中から脇道に入る選択をしたっていい。ただ、覚悟は必要だ。捨てるものや犠牲になるものが出てくるかもしれないからだ。
「聖子さんだって選択のたびに、捨てたものや犠牲がたくさんあったと思います。私は持っているけど、松田聖子さんが持っていないものはたくさんある。だから、聖子さんは美しくて素敵だと思うけれど、聖子さんになりたいとは思わない。もしそういう人が私のように多いとすれば、それは彼女が捨てたものや犠牲にしているものの多さを考えるとゾッとするからではないでしょうか」(あさのさん)
スポットライトの後ろに長く伸びる影。それが一生つきまとうことを聖子は覚悟して生きている。
※女性セブン2016年8月4日号