──女性には一夫多妻に対して、感情的な抵抗も強い気がします。

藤沢:一夫多妻と言っても、権力や金を持て余す男が、あるいは生まれつきモテる男が、傲慢に多数の女性をはべらせる、というようなものを僕はイメージしているわけではありません。妻と子を愛しつつも、その後に運命の人に出会ってしまった。そんな男が葛藤を重ね、苦しみながらも、その女性と交際を続け、やがて小さな命が誕生する。そんな人間味が溢れる一夫多妻です。

 あるいは、愛し合っていた夫婦が、すれ違い別れてしまう。そして、そんな失意の中で暮らす男性が、また、ひとりの女性と出会い恋に落ち、家庭を持つ。そんなことを繰り返していると、生涯に3人の女性と「結果的に」家庭を持つことになっていた。そんな心温まる事実上の一夫多妻なのです。

■少なくとも金だけは送られてくる愛人のほうが、よほどいい

──愛人として子育てをする場合、父親の協力を得られるか不安に感じる女性もいるのではないでしょうか?

藤沢:愛人でなくてもシングルマザーは増えていますし、結婚していても役に立たない父親はたくさんいます。一方で、少なくとも金だけは送られてくる愛人のほうが、よほどいい。もちろん、子育てをがんばってくれる人も多いでしょう。

 あと、僕は子育ては、母系制社会のほうが幸福かもしれない、と思うんですよね。つまり女性が自分の両親や家族と同居して、祖父母など家族の力を借りながら子育てをするほうがいいと。人類の長い歴史から見ると、赤の他人の男と女が二人きりで子どもを育てるって特異なことなんです。核家族で旦那が仕事で家に帰ってこないと、奥さんは孤立して精神的に不安定になりがちです。いまは共働きが増えると同時に、高齢化が進んで、高齢者の労働力はあまっているわけですから、親族らと複数世帯で子育てをするのが合理的なのではないでしょうか。夫婦は別居でもいいと思います。

──しかし、伝統的な家族観にこだわる日本人は少なくないと思います。

藤沢:安倍首相をはじめとする現政府も、伝統的な家族観にこだわっていますよね。しかし一夫一妻で結婚してから子どもを産むという現在の結婚制度は、必ずしも日本の伝統ではありません。日本には夜這いや妾などの文化もありました。伝統的には婚外子に寛容だったのです。むしろ、明治以降に西洋から入ってきたキリスト教的価値観の影響を受けた一夫一妻を絶対的な善とする家族観のことを、伝統と称しているわけです。

 政府は少子化問題に取り組んでいますが、いずれにしろ公の場では、人はポリティカル・コレクトネスの話しかできないんです。一方、恋愛してセックスして子どもを産むという男女の営みは、基本的にポリティカル・コレクトネスから外れた部分で行われている。だから少子化は政策議論にもっとも適さない話題であり、ポリティカル・コレクトネスではないところに、本当の解決策があるんですよ。

──その一つが事実婚だと。

藤沢:生物学的に子どもを産む適齢期のはずの高校生が妊娠したら犯罪者のような扱いだし、大学生が妊娠しても、好機の目で見られます。会社で働きはじめてすぐに妊娠するのは仕事に対する責任感がないからダメで、何年か働いて仕事も落ちついて、会社の同僚なんかと交際を経た後に結婚して、しばらくして、30歳のちょっと前ぐらいで妊娠するのが唯一正しい家族の作り方。

 学生が妊娠したら、何かの過ちのように見られたのに、35歳くらいになって子どもがいないと、今度は、やれ卵子の劣化だ、お前が歳を取ったら他人の子がお前の年金を払うんだぞ、反省しろババア、と言われる。こんなのおかしいと思いませんか?

 僕は、女性の選択肢が増えることを切に願っています。

藤沢数希■理論物理学研究者、外資系金融機関を経て、作家。金融日記管理人。著書に『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』『「反原発」の不都合な真実』『外資系金融機関の終わり』『ぼくは愛を証明しようと思う。』がある

関連記事

トピックス

全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪1〜10区」の最新情勢】維新離党の前職が出た2区、維新前職vs自民元職vs野党候補の5区で「公明党票」はどう動くか
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
間違いだらけの議事録は「AIのせい」(写真提供/イメージマート)
《何でもAIに頼る人たち》会社員女性が告白「ケンカの後、彼から送られてきた”彼女の方が悪い”とAIが回答したスクショ」ほどなく破局
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン