そんなタイ王室に触手を伸ばすのが中国だ。タイ王室の親中派筆頭はワチラロンコン新国王を上回る人気を誇るシリントン王女だ。訪中歴は30回を優に超え、世界の王族はおろか非王族を含めてもここまで中国に足を運んでいる要人はほとんどいない。
タクシン首相退陣以降は内政の混乱が続いたものの、元来タイは東南アジアの優等生だ。そんなタイに皇室と王室のご縁があれば、中国?タイの関係に楔が打ち込まれ、我が国の安全保障にとって重要な意味を持つ。
ソフトパワーによって我が国の世界におけるイメージを高めようとクールジャパンや観光立国といったコンセプトが注目を集めているが、世界でも類を見ない歴史を持つ皇室は我が国のソフトパワーの最たるものだ。
もし海外王室とのご縁があったら、私はそれを諸手を挙げて喜びたいと思う。こうした良縁は歴史を紐解けば、結果として国を守ることになるだろう。
●むらかみ・まさとし/1983年大阪市生まれ。東京大学法学部卒。2008年4月外務省入省後、北京大学、ロンドン大学に留学し中国情勢分析などに携わる。2012年12月~2014年11月衆議院議員。現在、同志社大学嘱託講師、皇學館大学非常勤講師、桜美林大学客員研究員を務める。著書に『最後は孤立して自壊する中国 2017年習近平の中国』(石平氏との共著、ワック刊)がある。
※SAPIO2017年5月号