かつて、ミュージシャンをドラマに起用する最たる理由は、「女性視聴者狙いで男性ミュージシャンを起用しよう」でした。つまり人気先行のキャスティングだったのですが、俳優として評価を得た人が増えた現在は、テレビ局のプロデューサー、ミュージシャンそれぞれの意向が一致し、相思相愛の関係になっているのです。
ただ、夏ドラマにここまで多くのミュージシャンが集結したのは単なる偶然なのでしょうか。夏はミュージシャンがひときわ輝くフェスの季節。プロデューサーたちが、「ミュージシャンの熱気や開放感をドラマに採り入れようと考えたのでは」と深読みしたくなります。
この夏、「この俳優、知らないけど何か存在感あるな」「出番は少ないのにやたら気になる」というキャラクターがいたら、それはミュージシャンなのかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。