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山田詠美「身近にある卑小な喜怒哀楽から始まるのが文学」

週刊誌を隅々まで読むという山田詠美さん

 日常の折々の出来事を俎上にのせて毎週綴る女性セブンの人気連載「日々甘露苦露」をまとめた山田詠美さんの最新エッセイ集が話題になっている。タイトルは『吉祥寺デイズ うまうま食べもの・うしうしゴシップ』。人気の住みたい街として知られる吉祥寺は、詠美さんが長く暮らし、原稿用紙に小説やエッセイを綴る場所でもある。「目指すは甘くて苦くて無銭だけど優雅な日々」という山田さんに、書評家の倉本さおりさんがインタビューを行った。

「イメージはクッキングメモです。ちょっとの時間で読めて、ぱぱっと簡単に自分の中に取り込める感じ。それこそシチューの鍋をかき混ぜながら読めるようなものというか。そういう、女性週刊誌が担っている役割を意識しながら書いていました」

『吉祥寺デイズ』は、「日々甘露苦露」から、とりわけ人気の高かった95篇を選り抜いてまとめ直したもの。「うまうま食べもの・うしうしゴシップ」の副題のとおり、美味なる食べものや大好きなお酒の話をほどよく絡めながら、その時々で世の中を騒がせてきた政治や事件、ゴシップのネタを小気味よく捌いていく。ベテラン作家ならではの余裕と大人の愉しみが詰まったエッセイ集に仕上がっている。

「食べものに関する言及を1行でも2行でも入れると、たとえ時事問題について書いていたとしても、ちゃんと生活の延長線上にある感覚につなげられるんですよ。なぜなら、食べものについて書くと、“しょせん私はこういう人間です”っていうことが如実に表れるから。上から目線でものを語ることが自然となくなるんです」

◆今となっては週刊誌を端から端まで読む

 山田さんは、ちょうどバブル期に突入する1985年、クラブ歌手の女と黒人の脱走兵の荒々しくも繊細な関係を描いた『ベッドタイムアイズ』で文藝賞を受賞しデビューした。その鮮烈な性描写のみならず、当時、作品のモデルとなった黒人男性と同棲していたことも大きな注目を浴び、マスコミは若き女性作家の経歴や私生活をセンセーショナルに書きたてた。

 その2年後、『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞を受賞。恋人が暴行事件を起こして新聞沙汰になっていた時期だったこともあり、六本木の高級ディスコで選考結果の「待ち会」を行った際には、なんと100人以上の報道陣が詰めかけたという。今では考えられない光景だ。

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