『まんぷく』を制作しているNHK大阪放送局の朝ドラは、『マッサン』『あさが来た』『べっぴんさん』『わろてんか』と実在した人物をモチーフにした作品が続いています。
『まんぷく』もインスタントラーメンを開発した安藤百福さんをモチーフにしているものの、主人公はあくまで妻の福子。「福子のモチーフとなった百福さんの妻・仁子さんの資料はほとんどなく、子孫からヒアリングしたのみのほぼオリジナル」だけに、脚本家の力が作品の出来を左右するでしょう。
その点、脚本を担当する福田靖さんはこれまで、『HERO』(フジテレビ系)、『海猿』(フジテレビ系)、『龍馬伝』(NHK)、『DOCTORS~最強の名医~』(テレビ朝日系)などで魅力的な主人公を作り上げてきただけに期待感十分。実際、わずか2週の放送だけで安藤さんと福子に、視聴者からの好感をガッチリつかませました。
タイトルバックで福子は、何かを探すように森や海辺を歩きまわり、時に転んでしまいますが、すぐに立ち上がって歩きはじめ、最後は海に向かって大の字ポーズをします。それが暗示するのは、さまざまな事業に挑む夫・萬平を支え、次々に訪れる試練を2人で乗り越えていく福子の人生そのもの。タイトルには萬平と福子の名を取った「萬福(まんぷく)」、すなわち「夫婦愛」という意味合いもあるだけに、回を追うごとに支え合うシーンが話題を集めるでしょう。
また、福子は単に天真らんまんなだけの女性に見えますが、英語が得意で気配りができることや、ホテルのフロントを務めていることからもわかるように、「実はしっかり者のキャリアウーマン」という一面があります。「今後、萬平の事業をどのようにマネジメントしていくのか」は、見どころの1つになっていくでしょう。
安藤さんは序盤こそ“美男美女縛り”の中で、温かいキャラクターを印象づけるのみに留まっていますが、女優としての見せ場はこれから。大きな試練が訪れるたびに、演技派女優らしいたくさんの引き出しを見せてくれそうで楽しみです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。