本人は小学校の頃から選挙速報が好きで、作文に、「将来は国連事務総長になりたいと書いた」と語っている。幼心に政界志向があったようだ。東大経済学部から大蔵省に入省し、エリート官僚の道を歩むが、政界進出へのステップと考えていたのかも知れない。
幸運だったのは、大蔵官僚時代に安倍首相の父・晋太郎氏の片腕で「安倍派四天王」の筆頭格の加藤六月・元農水相に目をかけられ、娘婿となったことだろう。六月氏は自民党税調会長を長く務め、「影の蔵相」と呼ばれて大蔵省に強い影響力を持つ実力者だった。
政治家志望の官僚にとって、有力政治家の娘婿となって「地盤、看板、カバン(*2)」を受け継ぐのが、政界進出の“特急券”というのは当時も今も変わらない。
【*2/選挙で当選するために必要とされる「三ばん」で、選挙区内の支持組織(地盤)、知名度(看板)、選挙資金(カバン)を指す】
ただ、勝信氏の婿入りには大きな“ドラマ”があったという。
勝信氏が最初お見合いで婚約したのは六月氏の長女・康子さん(現・内閣官房参与)。ところが、婚約中に大ケンカしてしまう。安倍派時代の長老の話だ。
「意気盛んな大蔵官僚だった勝信君が『この国を動かしているのは官僚だ』と言ったらしい。康子ちゃんも父親思いで勝ち気な性格だから、『何を言ってるの。お父さんたち政治家が国を動かしているのよ』と言い返して衝突してしまった。その後に婚約解消となり、あの時は六月先生も困っていたが、結局、勝信君は穏やかな性格の妹の周子ちゃんと結婚することになった。六月先生は、“妹の方とは性格が合うのか夫婦仲がいいんだよ”と喜んでいた」